b-flower 「つまらない大人になってしまった」

12年ぶりのb-flowerの新曲。タイトルの率直さにほんの少しざわついていた心は、b-flowerらしい繊細なイントロに続いて現れた不機嫌な声に不意を突かれて動揺する。白いノートのページに青いインクの滲みが広がるように、聞き覚えのある透明な声が胸の奥に広…

『ロックンロールが降ってきた日』

20代(1980年代生まれ)から70代(1930年代生まれ)までの15人のミュージシャンが「ロックンロールとの出会い」を語った本。とにかく面白い。一気に読み終えた。 ミュージシャンが自分自身の聴き手としての音楽体験を語るという点では、渋谷陽一による対談集…

the pillows TRIAL TOUR(2012/05/01 Shibuya O-EAST)

いいライブだった。 自分にとっての新作『TRIAL』の良さのひとつは、ギターにある。そのことがアルバムの曲順と同じ1曲目の“Revival”が始まった瞬間に十二分に証明される。いつにも増してPeeちゃんのギターが力強く感じる。そして、かっこいい。とにかく、セ…

『BLUE APLES〜born-again〜』

武道館公演のDVD化としては2007年の「YOSHII BDOKAN 2007』以来4年ぶり。ライブDVDのリリースとしては,昨年前半の「FLOWERS&POWERLIGHT TOUR 2011」を収めた『LIVE APPLES』から約5ヶ月という短いインターバル。意外なようで納得がいく。このライブは「これ…

マニラの花

出張でフィリピンのマニラへ。空港に降り立つと気温30℃。乾季で湿度が低く1年で最も過ごしやすい季節だという。 街中で見かけた乗合バスの「ジプニー」。 世界遺産の聖アウグスティン教会。 西日を浴びるステンドグラスの美しさ。 中庭はウェディングパーテ…

ザ・クロマニヨンズ TOUR ACE ROCKER 2012(2012/02/16 SHIBUYA-AX)

新作『ACE ROCKER』が素晴らしく、待ちに待ったライブ。雪の舞う、まさに<凍りついた月が香る>(シャイニング)夜。 新作と同じく、ライブの1曲目は“他には何も”。 やらずにいられない 事があります やらずにいられない 事をやるだけなんだ ただ それだけ …

『トライアル』

ピロウズの18thアルバム『トライアル』。 「チャレンジ」ではなく「トライアル」。その言葉の微妙なニュアンスが、今のピロウズの、山中さわおのモードを反映しているのだと思う。アルバムタイトルに呼応するように、収録曲の歌詞には<何度も>(Revial,Mi…

『ACE ROCKER』

とにかく歌が近い。特に中盤の“ナンバーワン野郎!”から“雷雨決行”に続く流れ*1。まるでライブアルバムを聴いているような気分になる。「今・ここ」の瞬間にすべてがあると思えるライブのあの感触が蘇る。アルバムがライブとほぼ同じ熱と速度で駆け抜けてい…

COUNTDOWN JAPAN 11/12(2011/12/29 幕張メッセ)

ザ・クロマニヨンズ クロマニヨンズはかっこよかった。いつもかっこいいけど、やっぱりかっこよかった。 1曲目の“ひらきっぱなし”で<はじめから 全開で>と歌ったことを証明するように、2曲目で“タリホー”(!)、3曲目“ギリギリガガンガン”(!!)という…

Flowers & Powerlight Tour 2011 〜born-again〜(2011/12/28 日本武道館)

毎年恒例の「YOSHII BUDOKAN」と重ねた形での「Flowers & Powerlight Tour 2011 〜born-again〜」のツアーファイナル。ツアー中と変わらないセットリストの潔さは、春のツアーも含めて今年1年をかけて歩んできた「旅」への自信とこだわりなのだと思う。 歌も…

the pillows Energiia Tour(2011/12/15 Zepp Tokyo)

約1年ぶりに見たピロウズのライブ。 ツアータイトルにもなっている新曲の“エネルギヤ”。スローなテンポから徐々に熱を帯びて走り出す感じと同じフレーズを繰り返しながら高揚していく感じは、これまでのピロウズの曲にはあまりなかったので新鮮。ライブで聞…

Flowers&Powerloght Tour 2011〜born-agin〜(2011/12/09 千葉県文化会館)

ライブの後、何度もセットリストを眺める。何度眺めても面白いセットリストだと思う。だからこそ、1曲ごとにとても鮮明な印象が残っている。男女の天使が印象的なスタイリッシュな映像を背にして暗がりの中で静かに歌われた“Born”から一転して新たに生み落と…

『AfterThe Apples』

とにかくボーカルが素晴らしい。 さまざまな表情を持ちながらも、リズムが目立つアレンジや弾き語りに近いミニマムなトラックは、野太くて艶のある歌声を際立たせる。特に“Next Innovation”と“ダビデ”のボーカルの熱の帯び方と放ち方。曲の終わりに向けて静…

 山中さわお『退屈な男』

ロックバンドのメンバーがソロアルバムを出すとき、バンドとは違う音楽を追求したり、バンドのパブリックイメージとは違う表情を見せたりすることが多い。だから、ソロアルバムというのは、そのアーティストの「素顔」や「等身大」により近い作品といえる。…

MUSIC ON! TV presents GG11 -10th Anniversary-(幕張メッセ 2011/09/24)

イベントでクロマニヨンズを見るのはおそらく5年ぶり。10曲のセットリストは最初の1曲を除いて他はすべてシングル曲。 ライブで初めて聞く最新シングルの“ナンバーワン野郎”。CDではその直球っぷりゆえにかえって少しちょっと物足りないと思ったことを申し訳…

『8月32日へ』

ジャケットが印象深い。深い緑のなかに4人が並んで立っている風景は、映画『スタンドバイミー』を髣髴とさせる。彼らはこれから冒険に出発するのだろうか、その途中だろうか、それともすでにそれを終えてしまったのだろうか。アルバムの最後の“26才の夏休み”…

氣志團PRESENTS極東ロックンロール・ハイスクール〜ツッパリHigh School Rock'n Roll(不登校編)〜(2011/07/27 LIQUIDROOM)

メイジャーデビュー10周年を記念して氣志團がホストとなって主催する対バンシリーズギグ。神聖かまってちゃん 神聖かまってちゃんのライブは曲の始まりがギクシャクする。メンバーの誰かが次の曲名を告げてからイントロまで妙な間があったり唐突に始まったり…

Flowers & Powerlight Tour 2011(2011/07/01 東京国際フォーラム)

この日のライブが自分のなかの深いところにいつまでも残ると確信した。「心に残る」「胸に刻まれる」という言葉は感動の比喩ではなくて、感動そのものだと思った。“球根”につながるピアノソロ。鍵盤が“恋の花”のメロディをかすめるところでもう胸がいっぱに…

Flowers&Powerlight Tour 2011(2011/06/02 NHKホール)

開演から30分遅れで席に着いたとき*1、吉井和哉はこの会場では何度もライブをしたことがあると話していた。 NHKホールの3階席から見下ろすステージは、黒い地面に細長い何かが突き刺さっているように見えた。けれど、MCが終わって“おじぎ草”を歌い始めた吉井…

『The Apples』

吉井和哉の新作を初めて聞くとき、前作からの変化を予感しつつも、いつも必ず予想を裏切られる。そして、繰り返し聞くうちに、その変化はこれまでの彼の作品のなかで予言されていたのだと気づく。吉井和哉6枚目のソロアルバム『The Apples』。真の意味でのタ…

ザ・クロマニヨンズ ツアー 2010-2011 ウンボボ月へ行く(2011/04/10 日比谷野外音楽堂)

2011年4月10日、日比谷野外音楽堂、ザ・クロマニヨンズ。この日のライブを、私はずっといつまでもはっきりと覚えていると思う。夕暮れが迫る会場いっぱいの歓声のなかメンバーが登場。ヒロトがステージ袖から転がるように駆け出してくる。第一声はもちろん「…

「FLOWER」(2011/03/18 ミュージックステーション)

東日本大震災から1週間が過ぎた2011年3月18日。生放送の「ミュージックステーション」で吉井和哉は歌った。 番組の始まりから終わりまで、その表情はずっとこわばったままで、沈痛や神妙さのなかに憔悴さえ感じられた。頬の窪みと皺がより深く濃くなっていた…

「LOVE&PEACE」

静かなギターで始まり、歌い出しの言葉は<プリーズ>。僕は救世主ではないし、君さえ救えないかもしれない――そんな無力さから出発する吉井和哉の「愛と平和」の歌。 何も変わらないという絶望と、それでも何かが変わると信じる希望に引き裂かれるかのように…

『つまんね』『みんな死ね』

誰かに噛み付くわけでも何かを告発するわけでもない、不機嫌な呟きが、ぽつんとジャケットの宙に浮かぶ。神聖かまってちゃんの2枚同時発売のアルバム『つまんね』と『みんな死ね』。『つまんね』 1曲目の“白いたまご”。<今すぐ壊して>という歌声は、たまご…

YOSHII BUDOKAN 2010(2010/12/28 日本武道館)

ユニオンジャックを背中に貼り付けた真っ赤なコートで登場したその瞬間から、吉井和哉は自信満々だった。新曲“アシッドウーマン”のへヴィさでさらっとライブの幕を開けてしまうその姿は憎たらしいほど堂々としていた。東スタンドから見下ろしたその背中はギ…

昼に眠る街、香港。

12月のカレンダーの真ん中を横切って香港へ。 曇り空の下、海と山にきゅっとはさまれたその街はちょっと眠たげだった。 地下道にあったマリアンヌ・フェイスフルのポスター。来年開催の「香港藝術節(Hong Kong Arts Festival)」に出演するという。 帰国し…

ザ・クロマニヨンズ ツアー 2010-2011 ウンボボ月へ行く(2010/12/7 SHIBUYA-AX)

開演前は星空だったステージに青白い地球が降りてきて、ウンボボが月に到着。 1曲目“オートバイと皮ジャンパーとカレー”から新作を曲順通りに駆け抜けていくバンドはまさに<はじめから 全開で 止まる気もなし>(ひらきっぱなし)。 ライブで鉄壁のリズム隊…

the pillows presents CHEMICAL BUMP SHOW !!(the pillows/Scars Borough 2010/11/25 高円寺HIGH)

アンコールの“この世の果てまで”の直前。「連れてっちゃいます!」。その言い方が自然に感じられるリラックスしたライブ。こけら落としをした高円寺HIGHでの、縁あるバンドを迎えて続く“CHEMICAL BUMP SHOW”ならでは。いいセットリストだった。全アルバムを…

オートバイと皮ジャンパーとカレー

クロマニヨンズはあいかわらずだ。「ロックンロールがロックンロールについて考えすぎている」21世紀の片隅で、あきれるほどにあっけらかんとあいかわらずだ。“オートバイと皮ジャンパーとカレー”。もう、タイトルだけで笑ってしまう。「あぁ、マーシーだ」…

スピッツ 「シロクマ/ビギナー」

とても奇異に思われるかもしれないけれど、スピッツの“シロクマ”を聞いて「ゴミ」のことを思った。 今すぐ抜け出して 君としゃべりたい まだ間に合うはず 地平線を知りたくて ゴミ山登る 答え見つけよう この曲を聴いて「ゴミ」は草野正宗のソングライターと…