the pillows Energiia Tour(2011/12/15 Zepp Tokyo)

約1年ぶりに見たピロウズのライブ。
ツアータイトルにもなっている新曲の“エネルギヤ”。スローなテンポから徐々に熱を帯びて走り出す感じと同じフレーズを繰り返しながら高揚していく感じは、これまでのピロウズの曲にはあまりなかったので新鮮。ライブで聞くとCD以上に曲の思いがひりひりと迫ってくる。
そして、山中さわおのラブソングならではの歌詞。人は恋に酔っているとき、「彼女(彼)のどこが好き?」と尋ねられたら、はにかみながら「わからない」あるいは「全部!」と答える気がする。だとしたら、<パンダのシャツがやけに似合ってた/星条旗のタオルではしゃいでた/カメラ向けると変な顔してた/いつもいつもいつも可愛かった>と「キミ」のディテールを浅い息つぎでいくつもいくつも歌うこの曲は、甘い酔ったラブソングというよりも苦くて切ない告白のように聞こえてくる。

キミは僕を動かすエネルギー
今も僕を動かすエネルギー
キミは誰かのものになったけど
今も僕を動かすエネルギー

思えば、山中さわおのラブソングのなかの「キミ」と僕はいつもほとんど離れている*1。その距離に身悶えするようなこれまでのラブソングとは少し違って、この曲では<開くべき扉を通り過ぎた/臆病な男の末路>とも歌われている。サラッと歌われているけれど、距離を縮めようとしなかった(できなかった)自分自身を見つめているこのフレーズが、この曲の肝なのだと思う。その意味でも“エネルギヤ”は「新しい」曲という感じがした。

そして、この曲に続く“BLOCKHEAD”での一件。客席の前方で生じたファン同士のトラブルに対して、曲の途中でひとり演奏をやめて仲裁するその姿は、ピロウズの曲にある「まっすぐさ」「嘘のつけなさ」そのものという感じで、山中さわおはそういう人だと分かっていたつもりでも、いざ目の当りにすると動揺した。仲裁し始めたときの怒りの表情と状況を把握して我に返ったときの恥ずかしがる表情とのギャップが、ライブを邪魔されたくないという思いと自分の行動がライブを中断させてしまったことの戸惑いを表していた。山中さわおにとっての音楽、ライブの重みがずしんと伝わってきた。

新旧織り交ぜたセットリストを通して、明るい曲よりも暗い曲の方が山中さわおの輪郭がくっきりするような、そんな気がしたライブだった。でもそれは、「ピロウズは暗い曲の方がいい」という意味じゃない。どんなに暗い曲を歌っても悲しみのなかに自分を見失わない強さがあることを確認できるからという意味で。

the pillows セットリスト(2011/12/15)
RAIN BRAIN
ビスケットハンマー
NO SELF CONTROL
New Animal
バビロン 天使の詩
Kim deal
エネルギヤ
BLOCKHEAD
Ritalin 202
Skeleton Liar
THAT HOUSE
ハイキング
FLAG STAR
日々のうた
RUSH
MY FOOT
Midnight Down
GOOD DREAMS
その未来は今


(encore1)
YOUR ORDER
Sleepy Head


(encore2)
RUNNERS HIGH
LITTLE BUSTERS

*1:そういえば以前こんなことを書いていた。http://d.hatena.ne.jp/sgfk/20070124#p1