Flowers & Powerlight Tour 2011(2011/07/01 東京国際フォーラム)

この日のライブが自分のなかの深いところにいつまでも残ると確信した。「心に残る」「胸に刻まれる」という言葉は感動の比喩ではなくて、感動そのものだと思った。

“球根”につながるピアノソロ。鍵盤が“恋の花”のメロディをかすめるところでもう胸がいっぱになる。その後イントロのギターが鳴り始めたところで、吉井和哉はドラムの前からゆっくりと一歩一歩、正面のマイクスタンドに近づいていく。すでにステージの上にいる吉井和哉は、この曲で改めてもう一度「ステージに上がる」。
1ヶ月前のNHKホールでの感動があっさりと席を譲って今ここのそれに取って代わっていく。そして、あぁ、この人には涙がいっぱい詰まっているんだなぁと思った。吉井和哉に対して初めてそんなふうに思えた。そうしたら、涙がぽろぽろと止まらなくなった。歌い終えた後のおじぎ姿には、もうなんて形容したらいいのか分からない気持ちになった。

なんのてらいもなく「日本一の」と紹介するメンバーを従えてというよりも、吉井和哉もそのメンバーであるバンド*1の演奏は、吉井和哉のキャリアのなかで自他ともに最高と断言できる素晴らしさ。ライブの最後の最後までその勢いと力強さとしなやかさは変わらなかった。
ライブの中盤の“おじぎ草”から本編ラストの“Love&Peace”までMCをはさまなかった理由が、数少ないMCのなかで「心」ではなく「魂」という言葉を選ぶ理由が本当によく分かる気がした。音楽のなかに全てがあって、それが魂と魂との間に直接プラグを繋いで届けられるようなそんな演奏がそこに、あった。

素晴らしいライブだった。ライブを「素晴らしい」と表現するときの、その「素晴らしい」という言葉の定義が自分のなかで更新された、本当に素晴らしいライブだった。

吉井和哉セットリスト(2011/07/01)
THE APPLES
ACIDWOMAN
VS
Chelsea Girl (The Yellow Monkey
ロンサムジョージ
イースター
OK (The Yellow Monkey
おじき草
球根 (The Yellow Monkey
MUSIC
クランベリー
シュレッダー
ONE DAY
GOODBEY LONELY
バラ色の日々 (The Yellow Monkey
ビルマニア
LOVE & PEACE


(encore)
MY FOOLISH HEART
HIGH & LOW
CHAO CHAO
WEEKENDER
FLOWER

*1:ナポリタンズ。何より吉井和哉自身がそこに「居場所」を見つけた嬉しさにはしゃいでいることがひしひしと伝わってきた。メンバーから最大限の関心と愛情を引き出して「子ども」になれるとき、吉井和哉は最もよく音楽を人に「与える」ことができるのだろう、と思った。