ライブの後、何度もセットリストを眺める。何度眺めても面白いセットリストだと思う。だからこそ、1曲ごとにとても鮮明な印象が残っている。
男女の天使が印象的なスタイリッシュな映像を背にして暗がりの中で静かに歌われた“Born”から一転して新たに生み落とされた獣のように野蛮な“無音dB”という冒頭の2曲のコントラストが鮮やか。
それに続く曲は1曲ごとにテイストがめまぐるしく変わりながらも、演奏は一貫してパワフルでエネルギッシュ*1。そして何より吉井和哉が実にのびのびと歌っていた。終盤になっても、というより終盤になればなるほど力強く伸びる声とその声量に改めて驚く。力んで絞り出すのではなく、湧き出る水を放つように歌っていた。その声で歌った“HATE”は、冬の冷たい雨のような悲しい心情が冷たいままに熱を帯びるような迫力があった*2。
そして、やはり出色なのは“母いすゞ”。曲の持つファンクなテイストがスクリーンに映されたPVのアシッドな色合いと相俟って、吉井和哉でしか成立しないファニーなソウルミュージックが出現していた。シリアスとユーモアの境界を行き来するその感覚は終盤の“マサユメ”にも通じていて、吉井和哉の「新しい展開」にわくわくした。
セットリストをだけ見ると一瞬「何がしたいのか分からない」という印象もよぎるけれど、ライブを観ると「こういうことがしたいんだ」ということにとても納得がいく、そんなライブだった。
ライブ全体を通してストーリーやスタイルを提示するというよりも、1曲1曲のなかに濃密なストーリと確固としたスタイルが込められていて、それを十全に表現しきっているライブだった。最新の曲の間に“FINE FINE FINE”や“RED LIGHT”を歌う自由と奔放さが、今の吉井和哉の調子の良さの証しでもあるということ。
ライブの後半、ぴょんぴょんと飛び跳ねる吉井和哉を見て、ああ、ほんとに今の吉井和哉は調子が良いのだと思った。*3
吉井和哉セットリスト(2011/12/09)
Born
無音dB
VS
Next Innovation
煩悩コントロール(新曲)
Fine Fine Fine(The Yellow Monkey)
母いすゞ
ダビデ
HATE
クランベリー
RED LIGHT(The Yellow Monkey)
ALL BY LOVE
バスツアー
マサユメ(masa-yume)
嘆くなり我が夜のFantasy(The Yellow Monkey)
ビルマニア
LOVE&PEACE
(encore)
MUSIC
星のブルース
FINALCOUNTDOWN
FLOWER