氣志團PRESENTS極東ロックンロール・ハイスクール〜ツッパリHigh School Rock'n Roll(不登校編)〜(2011/07/27 LIQUIDROOM)

メイジャーデビュー10周年を記念して氣志團がホストとなって主催する対バンシリーズギグ。

神聖かまってちゃん
神聖かまってちゃんのライブは曲の始まりがギクシャクする。メンバーの誰かが次の曲名を告げてからイントロまで妙な間があったり唐突に始まったりして、「早えぇよ、バカヤロウ」との子が怒っていた。神聖かまってちゃんのライブは終わりがグダグダになる。メンバーがステージから去ってセットチェンジが始まってもの子はステージに居続けた。時間や段取りを無視する自由を行使しているようでいて、実はそれ以外の方法でライブを終わらせることができない不自由さに縛られているようにも見えた。
それは「バンドの持ち味」というには緊張した空気に包まれていて、観ていて胸が苦しくなった。互いの顔色をうかがって身動きがとれなくなるような、そんな空気がメンバー同士、ステージと観客との間にあった。だから、ライブの中盤ぐらいからは、曲が始まるとホッとした。曲が始まると、なんともいえないその空気から逃れられるような感じがしたから。
約1年前に同じ会場で見たミドリとの対バンid:ay8b:20100814のときにはペナペナに感じた演奏は、音が厚くなってたくましくなって「バンド」らしくなっていた。ライブの序盤は“レッツゴー武道館”“美ちなる方へ”と駆け出すような曲が続いたけれど、3曲目“グロい花”(新曲)以降はダウナーな殻に閉じこもるような曲が続いた。でも、それが良かった。特に“黒いたまご”と“芋虫さん”。文字通りの<どうしようもない>感情が歌われつつも、そこで歌われているのがどうしようもない感情であればあるほどそれはしっかりと「音楽」の殻に包まれて、守られているように感じた。その殻は、どうしようもない感情が自分や他人を傷つけることがないように守ってくれる毛布のような気がした。
神聖かまってちゃんの音楽は、の子の中にある得たいの知れない寂しさや痛みがそこに込められているというよりも、寂しさや痛みの中に住んでいるの子がそこから逃げるためのシェルターのようだと思った。曲が終わる度に不機嫌でぎこちないコミュニケーションを繰り返すの子を見て、の子の中にある病いが音楽に昇華されているというよりも、病いの中に住んでいるの子が音楽に逃避してきているようだと思った。
だから、どのタイミングで拍手していいのか、そもそも拍手していいものなのか迷った。客席が静かだったのは、演奏の拙さとかそういうことじゃなく、そんなふうに生まれてくる音楽にどう応えたらいいのか戸惑っていたからだと思う。

神聖かまってちゃんセットリスト(2011/07/27)
レッツゴー武道館 
美ちなる方へ
グロい花 
天使じゃ地上じゃちっそく死 
黒いたまご 
芋虫さん 
いかれたニート 
通学LOW 


氣志團
ライブが始まってすぐにさっきのライブ中にちばぎんがぽろっと漏らした言葉を思い出す。「楽屋で氣志團さんのタイムスケジュールみたら曲名の隣に何時何分何秒まで書いてあった。かまってちゃんのところはまっしろ」。かまってちゃんが「ノー・コントロール」なら氣志團はまさに「オーバー・コントロール」。演奏、演出、MCの内容や間の取り方まで、全部において細部にわたってアーティストの意図と意志が貫かれていて「すごい」の一言に尽きる。
けれど、そこにあるのは計算で観客を手玉に取るような下心ではなく、持っているものを総動員して真正面からぶつかってくる驚くような潔さだった。だから、本当に驚いた。あぁ、やっぱり氣志團はすごいんだと思った。
“ONE NGIHT CARNIVAL”のサビの合唱で思わず泣きそうになる。こんなに純粋なファンの合唱を聞いたのは初めてだと思った。自分で自分にびっくりした。
「ロックンロール」っていったい何なのだろう、と思うことがある。それは音楽であると同時に、それを通してつながったバンドとファンの「関係」のことでもあるのだと、なりふりかまわず会場にいる全員に一緒に歌ってほしいと迫る*1綾小路翔を見て思った。
今回の対バンシリーズギグの開催発表のコメント*2のなかの一節。「俺は何の恵まれない田舎の中学生でした。そんな俺が今日まで決して驕る事も腐る事もなく生きてくる事が出来たのは、かつて観たライブ、必死になって聞いた音楽のおかげです」。アーティスト自身が今もまさにロックンロールに救われ支えられる「関係」を生きていることがひしひしと伝わってくるライブだった。

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アンコールは、氣志團との神聖かまってちゃんとで“23才の夏休み”のセッション。の子はステージに姿を現さず、申し訳なさそうに歌うメンバーの姿に胸がチクっと痛む。途中、舞台袖からの子のボーカルが聞こえてくる。ステージも観客もその登場を期待したけれど、結局姿を見せずに「俺はこういうの好きじゃないんだよ、コノヤロウ」の声を残してフェイドアウト。それをあたたかく見守る氣志團の懐の深さに救われたラストだった。

*1:「歌わないとアパートのポストに死にかけのハト入れる」w

*2:氣志團PRESENTS 極東ロックンロール・ハイスクール」開催の発表に寄せて