「LOVE&PEACE」

静かなギターで始まり、歌い出しの言葉は<プリーズ>。僕は救世主ではないし、君さえ救えないかもしれない――そんな無力さから出発する吉井和哉の「愛と平和」の歌。
何も変わらないという絶望と、それでも何かが変わると信じる希望に引き裂かれるかのように、曲にも歌詞にも繊細さと力強さが同居している。と同時に、新境地に足を踏み入れた初々しさと何を歌ってもブレることはないという自信も同居している。そのことがシンプルなアレンジながらも曲に奥行きを与えていて、何度も繰り返して聞いてしまう。

「ひとつだけ多すぎる朝/うしろをついてくる」(JUMP)と歌ったのは忌野清志郎。この曲にも朝の風景が歌われている。そこには、眠っている間に天使が魔法の粉をふりかけて願いが叶った朝の風景は、実は<悲しい思い出の夢で目を覚ました>いつもの朝だったという発見がある。<おはよう>という何気ない言葉が、かけがえのない言葉として響く。
ないものねだりではなく今あるものを愛おしむことが、「愛と平和」を歌うことだと気づかせてくれる。

だから、曲の最後の言葉は叫ばなくてもよかったのだろう。LOVE&PEACE――吉井和哉はそれを奥ゆかしい挨拶のように歌っている。

LOVE&PEACE

LOVE&PEACE