とにかく歌が近い。特に中盤の“ナンバーワン野郎!”から“雷雨決行”に続く流れ*1。まるでライブアルバムを聴いているような気分になる。「今・ここ」の瞬間にすべてがあると思えるライブのあの感触が蘇る。アルバムがライブとほぼ同じ熱と速度で駆け抜けていく。クロマニヨンズ以前にまで遡ってみても、アルバムとライブがここまで近づいたのは初めてじゃないかと思うほどに。「再生」という言葉そのままに、何度聞いても、曲が始まるその度ごとに心のなかに感情が新しく生まれる。本当に聞き飽きる気がしない。
歌詞が本当にいい。疾走するロックンロールのどこを切り取っても、その切断面から詩情がこぼれ出す。例えば、<いつか咲くと言った/白い花をつけて/僕はもう見つけた/あなたの白い花>(ハル)で、ヒロトが花を歌うのはいつぶりだろうかと考える。<発条(ぜんまい)切れのひぐらし/あの日の風 入道雲/形容詞などなくても/爆発する流れ星>(シャイニング)で、マーシーが描く夏の空に中原中也と山頭火とケルアックの横顔が浮かぶ。アルバムのラストでルチャドールが歌う<くよくよすんなよ 輝く星は/めそめそすんなよ エストレージャ デ メヒコ>(メキシコの星)*2で、まるでヒロト自身が「日曜日よりの使者」になったみたいだと思う。
そして、このアルバムを聞きながら「ああ、ほんとうに」と思ったことがひとつある。ヒロトとマーシーほど「原点回帰」という言葉から遠いところにいるロックンローラーはいない、と。彼らは常に「原点」にいる。そこから一歩も動かないのではなく、駆け抜ける一歩一歩を新たな原点にして爆発させ続けている。まさに<形容詞などなくても/爆発する流れ星>のように。
このアルバムについて「誰が何と言おうと関係ない」と心の底から思えるという意味で、まぎれもなく名盤。
- アーティスト: ザ・クロマニヨンズ
- 出版社/メーカー: アリオラジャパン
- 発売日: 2012/01/18
- メディア: CD
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