吉井和哉
12月28日恒例の吉井和哉の日本武道館公演の中でも、特に印象に残るライブになった。セットリストも演出もそして吉井和哉の佇まいも全て含めて、吉井和哉の現在地を正直に明かしたライブだったと思う。12月28日という特別な日の武道館公演だからといって無理…
吉井和哉の新レーベル“UTANOVA”からデジタルリリースされた新曲「みらいのうた」。 <何もかも嫌になった こんな時何をしよう>と歌い出されるこの曲は、「コロナ禍」の生き難さをなぞりながら、過去を振り返り現在に向き合いそして未来へと思いを馳せる吉井…
企画・制作TYMS PROJECTからの新型コロナウイルス対策とその協力への感謝のアナウンスの後、開演直前の日本武道館に流れたのは、ジプシー・キングスの“マイ・ウェイ”――映画『パンドラ』の中で、1998年から1999年にかけて行われた年間133本に及ぶ「PUNCH DRUN…
吉井和哉の笑顔が少ないライブだった。印象に残ったのは、涙こそ流れてはいないもののほぼ泣き顔で“JAM”を歌う姿や、ライブの最後の“プライマル”を歌い終わって歯を食いしばりながらマイクをマイクスタンドに戻す姿だった。でも、だからこそ、この日のライブ…
2020年4月4日と4月5日に予定されていた、ザ・イエローモンキの東京ドーム公演は、新型コロナウィルス感染症の影響により「開催延期」となった――結成30周年を祝うバンド史上初のドームツアーが発表された昨年8月はもちろん、この新曲が発表された今年3月半ば…
開演5分前、白いユニフォームが眩しいブラスバンドがステージ左右の端に並びフランク・シナトラの‟My way”を堂々と奏でた後、趣を変えてアッパーな演奏が始まったと思ったら、そのメロディは‟見てないようで見てる”だった。その演奏が進むにつれて徐々に会場…
ザ・イエローモンキーが、現在のバンドメンバーで初めてライブをした日が、1989年12月28日。それから30年の時が流れ、バンドの30歳の誕生日でもありバンドのキャリア史上最大規模となるドームツアーの初日となったライブは、序盤、中盤、終盤と進むなかで、…
ザ・イエローモンキーには12月がよく似合う。現在のメンバーになって初めてのライブが12月28日だったという「縁」もあるように、このバンドには、過ぎ去っていくことの感傷と新たに迎えることの希望が交錯する季節がとてもよく似合う。賑やかな風景の裏にあ…
“天道虫”で派手に幕を開けたライブだった。テーマの異なる4種類のセットリストのうち、今回は「ハート」のセットリストだった。タイトルに「LOVE」とある曲が多く歌われたけれど、そういう歌ほど、セックスと真正面から向き合う反面、愛と真正面から向き合う…
19年ぶりのオリジナルアルバム『9999』と同じく“恋のかけら”で幕を開けたライブは、「30周年」という時の流れを感じさせないというよりも、時の流れを味方につけたバンドだけが醸し出す「円熟」と「新鮮」が同居したライブだった。ロックバンドとして「脂が…
永井純一(2019)「第7章 フジロック、洋邦の対峙」書評(『私たちは洋楽とどう向き合ってきたのか』,南田勝也編著,花伝社,pp.210-243) 1997年7月26日、2人のオーディエンスの経験 私が初めてザ・イエローモンキーのライブを見たのは、1997年7月26日のフ…
ザ・イエローモンキー9枚目のオリジナルアルバム『9999』。活動休止、解散そして再集結を経ての19年ぶりの新作。バンドにとっても、ファンにとっても長い時間と「重い想い」を背負ったアルバムである一方で、1曲目“この恋のかけら”が進むにつれてこの新作が…
記憶は音楽と共にあり、音楽は記憶を呼び起こす――何かを思い出すことは、その当時の音楽と自分自身を思い出すことでもある。 東日本大震災から8年が経つ。当時のことを思い出すとき、かつてこのブログに記した音楽にまつわる2つの体験が鮮明に蘇る。どちらに…
アンコールで吉井和哉が歌った「毛皮のコートのブルース」がこの日のライブを象徴していた。曲に込められた吉井和哉の深い思入れや「イエローモンキー」というバンドの根っこにある世界観を感じつつ、全身黒の喪服のようないでたちで「Happy Birthday」と歌…
いいライブだった。「ソロアーティスト」としての、「独りの表現者」としての吉井和哉の音楽の魅力に出会い直し、見つめ直すような、そんな感慨深い瞬間の連続だった。東京国際フォーラムで吉井和哉のライブ見るのは3度目だった。それはいつも梅雨の紫陽花の…
吉井和哉のソロデビュー15周年に合わせてリリースされた、2015年のソロライブ音源と新曲からなるベストアルバム的1枚。 アルバムジャケットの吉井和哉の表情は、何と形容したらいいのだろうかと迷った。 遠くを見ているようで目の前の誰かを凝視しているよう…
素晴らしいライブだった。 この「素晴らしい」という言葉が、これまでのイエローモンキーのライブと同じ基準によるものではなく、その基準自体が更新されたような感覚があったという意味で「素晴らしい」ライブだった。2001年1月以来、活動休止、解散そして…
公開初日に銀座の映画館で観た。同じバンドのドキュメンタリー映画ではあっても、2013年に公開された『パンドラ ザ・イエローモンキー PUNCH DRUNKERD TOUR THE MOVIE』とは異なる感触と印象を残す映画だった。 2016年に「再集結」したザ・イエローモンキーの…
2013年にリリースされたファン投票によるベストアルバム『イエモン―FAN'S BEST SELECTION―』の収録曲を、再集結したザ・イエローモンキーが新たにレコーディングし直したベストアルルバム『THE YELLOW IS HERE』。タイトル通り、イエローモンキーが現在進行…
ほぼ毎年武道館で見届けていたこの日のライブを、今年はライブビューイングで見た。 開演前の武道館の会場には、席に着くとスクリーンに映し出された武道館の会場には、デビッド・ボウイの“ジギー・スターダスト”が流れ、ステージ上ではパッヘルベルの“カノ…
4年前に吉井和哉がソロで出演した時のことを思い出した。ライブというよりもその時の天気のことを。ライブが始まってから雨が本格的に降り出して、降ったり止んだりしながら最後には晴れて虹がかかっていた――という、そんな展開の空模様は、今にして思えば、…
このライブ以前、私が最後に横浜アリーナでライブを観たのは、2000年5月のザ・イエローモンキーの「SPRING TOUR」だった。それから16年。過ぎたのは「時間」ではなく「季節」だったのだと思う。1997年の“FIX THE SICKS”ツアーを髣髴とさせる演出とともに始ま…
この日のライブを観てしまうと、「素晴らしい」と心の底から思った2か月前の国立代々木競技場第一体育館でのライブでさえも、このバンドにとってはまだ「硬かった」のだと実感した。あれから、2か月が経って、まさに蛹が蝶になって飛び立ったような、そんな…
2016年5月11日19時00分00秒。歓声がもはや悲鳴に変わりそうなほどの興奮と歓喜のなか、ザ・イエローモンキーは帰ってきた。あの日確かに信じたものが幻なんかじゃなく、現実としてそこにあった。ステージ前面の半透明の幕に浮かびがった4人のシルエットを見…
それがとても大切なものであるとき、それに出会うことやそれを受け取ることに人は怯える。それを傷つけたり、それを失ったりすることを恐れてしまうがゆえに。この新曲を聞いて、信じながらも疑い続け、疑いながらも信じ続けるという「愛の怯え」がこのバン…
私が以前に書いていたブログで10年前に書いたザ・イエロー・モンキーのアルバムレビューです。少しだけ手直しましたが、10年前も今もこのバンドに対する私の思いは、このレビューにある思いのまま、そのままです。 ・BUNCHED BIRTH (1991.7.2 Release) この…
吉井和哉の武道館公演から一夜明けた朝、スーツケースをなくす夢を見た。夢の中でスーツケースをなくした私は、焦って、困っていた。目が覚めた後も、「夢で良かった」と感じるよりも、夢の中で感じた寂しいような悲しいような、そして少し恐いような気持ち…
梅雨明け間近の夏の陽射しが和らぎ始めた夕暮れに、人影まばらな灯りの消えたNHKホールの前に到着して、この日のライブ会場が東京国際フォーラムだったことに気づいた。この時すでに、開演時間の20分前。渋谷から有楽町へ向かうタクシーの窓から見た、柔らか…
5月の新緑が鮮やかな快晴の日。<愛が終わりのない青空に吸い込まれた>(クリア)のは、こんな青空だったのかもしれないと思うほどの。 5月2日から始まったツアー4本目にして、さらにパワーアップ、ヴァージョンアップした吉井和哉がいた。その確信はライブ…
ライブ終盤、「ありがとう、行ってきまーす」と、吉井和哉は清々しい笑顔で旅立ちを告げていた。セットリストが進むほどに声が伸びやかに、動きが軽やかになっていくその様子には、新作『STARLIGHT』とこの日から始まるツアーに対する確かな手ごたえと期待が…