ザ・クロマニヨンズ ツアー 2010-2011 ウンボボ月へ行く(2011/04/10 日比谷野外音楽堂)

2011年4月10日、日比谷野外音楽堂ザ・クロマニヨンズ。この日のライブを、私はずっといつまでもはっきりと覚えていると思う。

夕暮れが迫る会場いっぱいの歓声のなかメンバーが登場。ヒロトがステージ袖から転がるように駆け出してくる。第一声はもちろん「ロックンロール!!!」。

今回のツアーのこれまでのライブと同様に、新作『Oi!Umbobo』を中心にはじめから全開。過剰ではなく徹底、饒舌ではなく雄弁。だから本当にかっこいい。
クロマニヨンズは「いつもと同じ」だった。いつもと同じようにやっていた。けれど、その「いつもと同じ」が3月11日を境にしてもう同じではないということを、今日この日に「いつもと同じ」ようにやることがどうしたって違う意味を持ってしまうということを、ステージの上にいる彼らが感じていないはずなかったと思う。
何かを言っても言わなくても、言わないことにも意味が生じ、それが何かの宣言となってしまうような状況のなか、いつもと同じようにロックンロールを演奏するということ。そこにロックバンドとしての自覚がないはずはなかった。それを「覚悟」や「決意」と呼ぶこともできるだろう。
そして、春の風が吹く会場を疾走するクロマニヨンズを見て、彼らはもうずっと、あの日の前からずっと今日と同じ自覚のなかで演奏してきたのだと気づく。あの日を境に、何かを変える必要はクロマニヨンズのロックンロールには何ひとつなかったのだということ。

ライブが進むにつれて、どの曲も違う表情を見せながらも、その1曲1曲が惑星が直列に並ぶように重なって確かなメッセージになる。惑星は軌道のところどころで言葉とメロディを炸裂させて、その破片が胸に突き刺さる。*1

グリセリン・クイーン
生きてるうち できる事は何でも
グリセリン・クイーン
やってしまう 毎秒が伝説
グリセリン・クイーン)

ただ生きる 生きてやる
呼吸をとめてなるものか
エイトビート エイトビート
エイトビート

歴史のゆりかごが大きく揺れようと揺れまいと、今日この日にしか、今この瞬間にしか生きて演奏できない音楽が、ロックンロールが、そこにあった。だから、ヒロトは観客に向けて力をこめて大きな声でこう言ったのだと思う――「会いたかったよー。昨日じゃない、明日じゃない、今日、会いたかったんだよー」。

ザ・クロマニヨンズ セットリスト(2011/4/10)
オートバイと皮ジャンパーとカレー
伝書鳩
あったかい
底なしブルー
キャデラック
多摩川ビール
グリセリン・クイーン
草原の輝き
流線型
飛び乗れ!!ボニー!!
スピードとナイフ
ムーンベイビー
ひらきっぱなし
7月4日の横田基地
ボンジュール ロマンマン
いきもののかん
我が心のアナーキー
エイトビート
ギリギリガガンガン
あさくらさんしょ
紙飛行機


(encore)
南南西に進路をとれ
土星にやさしく
タリホー

*1:加えて、この日のライブは照明がとてもとても素晴らしかった。“多摩川ビール”でステージが満天の星空になった瞬間、“草原の輝き”(前半のハイライト!)でステージが真っ赤に染まった瞬間、“タリホー”でステージと会場が白く発光した瞬間。ロックバンドはこんなにもかっこよくて色気があってそして優しいのだということを目に焼き付けることができた。