Flowers & Powerlight Tour 2011 〜born-again〜(2011/12/28 日本武道館)

毎年恒例の「YOSHII BUDOKAN」と重ねた形での「Flowers & Powerlight Tour 2011 〜born-again〜」のツアーファイナル。ツアー中と変わらないセットリストの潔さは、春のツアーも含めて今年1年をかけて歩んできた「旅」への自信とこだわりなのだと思う。
歌も演奏も文字通りの意味で「ハードロック」。厚くて熱い、けれどどこか醒めたひねりのある不思議な感覚は吉井和哉ならでは。ユニークなセットリストのその意味が、腑に落ちた。

ライブの初めから終わりまで、どこを切り取ってもハイライトと感じられるほど1曲1曲が際立っていたけれど*1、本編ラストの“LOVE&PEACE”がとてもとても深く心に刺さった。ステージ上のスクリーンに映し出された吉井和哉の表情は、涙がこぼれていないというだけで、泣き顔そのものだった。とてもいい表情で歌っていた。そして、右手で強くマイクを握りながら、さらに左手をマイクに添えて、体を屈めて歌うその姿は、何かに祈りを捧げているようでもあった。春のツアーで“球根”を歌ったときよりも、もっと無防備で無心で無垢な感じがした。心のとても深いところで歌っている歌だと思った。
思い返してみると、ちょうど1年前の「YOSHII BUDOKAN2010」の最後の曲がこの“LOVE&PEACE”だった。そのライブレポで自分はこんなふうに書いていた*2

ライブの最後は新曲“LOVE&PEACE”。ライブの最後をリリース前の新曲で終えるのはソロになって初めて。軽やかだけれど、その自信に見合うだけの曲だった。春夏秋冬が歌われていた。

この曲が1年後にこんなふうに歌われることになるとは、1年前のあの日会場にいた誰も、歌っている本人でさえも想像していなかったけれど、でもこの曲はきっとこんなふうに歌われるためにあった曲だったのだと思う。春夏秋冬を駆け抜けて、歌が根をはり、芽を出し、花を咲かせたような、そんな感慨が会場中に広がっていくようだった。本当に良かった。
この曲に限らず、吉井和哉の曲は、曲自体が時間を経て育っていくような印象がある。例えば、今回のライブでもやはり白眉だった“HATE”。ソロになって最初の武道館公演*3で「カート・コバーンに捧げます」と言って歌っていたこと、間奏で「母さん、母さん・・・」と儚げに呟いていたことを思い出す。あの時から格段に飛躍した歌唱力で歌われる“HATE”のその凄さに驚くと同時に、でもやはりこの曲は最初からそういうふうに歌われるためにあった曲だということに気づかされて2度驚く。
だから、“FINE FINE FINE”“RED LIGHT”“嘆くなり我が夜のFantasy”が終わった後の割れるような歓声は、懐かしさじゃなくて、今ここで新たに曲に出会い直したことの驚きに対してだったのだと思う。

吉井和哉は変わったと思う。けれど、この人はきっと最初からこんなふうに歌うためにいた人だったのだと思う。
いいライブだった。

吉井和哉セットリスト(2011/12/28)
Born
無音dB
VS
Next Innovation
煩悩コントロール(新曲)
Fine Fine Fine(The Yellow Monkey)
いすゞ
ダビデ
HATE
クランベリー
RED LIGHT(The Yellow Monkey)
ALL BY LOVE
バスツアー
嘆くなり我が夜のFantasy(The Yellow Monkey)
マサユメ(masa-yume)
ビルマニア
LOVE&PEACE


(encore)
星のブルース
MUSIC
FINALCOUNTDOWN
FLOWER

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おまけ
これまでに書いた吉井和哉の武道館公演のレビューをまとめました。
一番心に深く残っているのは2006年の2月24日のライブです。このとき『jugra hard pain』の黒のジャケットを着ていました。読み返してみて個人的に面白かったのは、“CALL ME”の後で静かになった会場に対して「お金をドブに落とした気分ですか(笑)」というMC(2007/10/24)と、「離婚してるかどうかよりも、“シュレッダー”の最後をちゃんと歌いきれるかどうかの方が私には大問題」(2007/12/27)というところw

YOSHII BUDOKAN 2010(2010/12/28)
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GENIUS INDIAN TOUR 2007(2007/10/25)
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TOUR 2006 THANK YOU YOSHII KAZUYA(2006/12/28)
TOUR 2006 THANK YOU YOSHII KAZUYA(2006/12/27)
TOUR 2006 MY FOOLISH HEART(2006/02/24)
TOUR 2006 MY FOOLISH HEART(2006/02/23)