the pillows TRIAL TOUR(2012/05/01 Shibuya O-EAST)

いいライブだった。
自分にとっての新作『TRIAL』の良さのひとつは、ギターにある。そのことがアルバムの曲順と同じ1曲目の“Revival”が始まった瞬間に十二分に証明される。いつにも増してPeeちゃんのギターが力強く感じる。そして、かっこいい。

とにかく、セットリストと山中さわおの声の調子が良かった。新作の曲はライブで聞いてみると迫力がある。そして、その合間に挟まる旧作の曲は改めて歌詞とメロディの良さを思い知らされる。ピロウズには「代表曲」がないのかもしれない。どのアルバムからどの曲をピックアップして並べても、ほぼ「オールタイムベスト」と呼べるセットリストになってしまうから。

そして、“持ち主のないギター”。CDで聞いたときからずっとライブで聞きたいと思っていた。これほどライブで聞きたいと思った曲は、この数年間を振り返ってみても、他のバンドやアーティストを思い返してみてもなかった。この曲の何がそれほどまでに自分の琴線に触れたのか自分でもよく分からないけれど、おそらく<本当の孤独>だけが呼び起こすことのできる「美しさ」があるからだと思う。そんな印象を裏切らないというよりも、それを超える素晴らしさだった。
自分を知って嫌になった/消せるのなら消し去りたい>の後のシャウト。それまでステージを照らしていた照明が反転して、真っ白な逆光がステージを背後から照らして影絵のように浮かびあ上がったバンドのシルエット。今でも鮮明に思い出すことができる。そして、曲の後の拍手をあえてふり切るように“TRIP DANCER”のイントロが始まった瞬間に真っ赤な照明のなかでジャンプした山中さわおの姿も。まるで映画を観ているようだった。ピロウズは本当にかっこいいバンドだと思った。

“持ち主のないギター”で<燃え尽きるなんて/もうすぐなんだろう/流れ星の一つ それだけさ>という諦念の滲む「星」への想いが,それに続く“TRIP DANCER”の<僕の振り回す手が 空に届いて/あの星を盗み出せたら 何が変わるのか>という力強い問いかけに連なっていったように,“トライアル”の<最果ての星に紛れた/ギターを探しに行く>という「果て」を目指す静かな意志が,続く“この世の果てまで”で決して怯まない決意と覚悟に変わっていったように感じられるセットリストの妙味。<いつかの僕>(トライアル)と今の僕が曲を通して対話しているようでもあり、改めてピロウズの曲というのは山中さわお、彼自身なのだと痛感する。

1回目のアンコールで話した、高松のライブ後に行った点数の出るカラオケでピロウズを歌ったが、どんなに頑張っても80点ぐらいしか出なかったというエピソード(苦笑)。それに続く「でも、カラオケで80点出すことなんかより、お前らの心の最大100点出せばいいんだろ!!」というMCから間髪入れずに始まった“FUNNY BUNNY”。その実に山中さわおらしいMCも含めて、山中さわお、そしてピロウズが挑んでいる「トライアル」は今とてもいい状態にあると感じた。これまでと同じく、あるいはこれまでを超える名曲、名ライブに出会える予感がした。

忘れないようにもう一度書いておきたい。いいライブだった。

the pillows セットリスト(2012/05/01)
Revival
Hello, Welcome to Bubbletown’s Happy Zoo (Instant show)
ROCK’N'ROLL SINNERS
Comic Sonic
Flashback Story
ノンフィクション
ターミナル・ヘヴンズ・ロック
ICE PICK
ポラリスの輝き 拾わなかった夢現
エネルギヤ
Rescue
プライベート・キングダム
Minority Whisper
持ち主のないギター
TRIP DANCER
トライアル
この世の果てまで
POISON ROCK’N'ROLL
Ready Steady Go!


(encore1)
Funny Bunny
WAITING AT THE BUSSTOP


(encore2)
No Surrender