劇団フライングステージ第48回公演『Four Seasons 四季 2022』(2022/11/03 下北沢OFF・OFFシアター)

会場で配布された「ご挨拶」には「劇団フライングステージは1992年11月3日に第1回公演を行いました。」とあった。それからまさに30年後の11月3日に劇団フライングステージのお芝居を観た。 「30年」という「節目」の年の作品となった、ゲイ達が住むアパート…

Debonaire × b-flower(2022/06/18 新代田FEVER)

井の頭線に乗り換えるために久しぶりに降り立った渋谷駅は、大きく変貌していた。時間の流れの早さに追い越されるように日々を送りながらも、ずっと昔にb-flowerのライブを渋谷のライブハウスで観た記憶があまり色褪せていないことの不思議を思った。そして…

吉井和哉 THE SILENT VISION TOUR 2021-22(2021/12/28 日本武道館)

12月28日恒例の吉井和哉の日本武道館公演の中でも、特に印象に残るライブになった。セットリストも演出もそして吉井和哉の佇まいも全て含めて、吉井和哉の現在地を正直に明かしたライブだったと思う。12月28日という特別な日の武道館公演だからといって無理…

吉井和哉「みらいのうた」

吉井和哉の新レーベル“UTANOVA”からデジタルリリースされた新曲「みらいのうた」。 <何もかも嫌になった こんな時何をしよう>と歌い出されるこの曲は、「コロナ禍」の生き難さをなぞりながら、過去を振り返り現在に向き合いそして未来へと思いを馳せる吉井…

『映画:フィッシュマンズ』

メジャーデビューから30年、佐藤伸治がこの世を去ってから22年となるこの夏に公開となった「映画:フィッシュマンズ」。映画の中で、欣ちゃんは、デビュー直後のセールスについて「オーストラリアのレコーディングから帰国して1stアルバム『Chappie,Don't C…

劇団フライングステージ第47回公演『アイタクテとナリタクテ』『お茶と同情』(2021/06/26 座・高円寺)

劇団フライングステージ第47回公演は、『アイタクテとナリタクテ』と『お茶と同情』という、どちらも学校を舞台にした作品の再演。小学生と教育実習生--どちらもその場所、その立場を通過点として旅立っていく「幼き/若き人々」の眩しく健やかな姿ととも…

「月刊フラカンFEVER 2021 vo.6」フラワーカンパニーズ/友部正人(2021/06/01 新代田LIVE HOUSE FEVER)

フラワーカンパニーズのライブシリーズ「月刊フラカンFEVER」の配信ライブを観た。フラカンと友部さんという、とても嬉しい共演を観ることができた。このライブの少し前に友部さんのブログで数日入院したことが綴られていたので少し心配だったけれど、フラカ…

ザ・クロマニヨンズ「MUD SHAKES 2021」(2021/02/20)

新作『MUD SHAKES』を引っ提げた「初日で、もしかしたら最終日かもしれない」ライブを配信で見た。昨年12月のアルバムリリース直後の全曲配信ライブはスタジオ(おそらく録画)ライブだったけれど、今回は東京ガーデンシアターでのライブのリアルタイム配信…

THE YELLOW MONKEY 『Live Loud』

ザ・イエローモンキー約20年ぶりのライブアルバム『Live Loud』。2019年から2020年にかけて行われたドームツアー(名古屋ドーム、京セラドーム、東京ドーム)で演奏された全48曲79テイクからファン投票をもとに選ばれた楽曲で構成されたこのアルバムは、ファ…

THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary LIVE ーBUDOKAN SPECIAL-(2020/12/28 日本武道館)

企画・制作TYMS PROJECTからの新型コロナウイルス対策とその協力への感謝のアナウンスの後、開演直前の日本武道館に流れたのは、ジプシー・キングスの“マイ・ウェイ”――映画『パンドラ』の中で、1998年から1999年にかけて行われた年間133本に及ぶ「PUNCH DRUN…

ザ・クロマニヨンズ「MUD SHAKES 全曲配信ライブ」(2020/12/11)

ザ・クロマニヨンズの新作『MUD SHAKES』のリリースに合わせた、バンド史上(ヒロトとマーシーのキャリアにおいても)初の配信ライブを観た。ライブ会場となった、ハイロウズ時代からのプライベートスタジオ「アトミック・ブギー・スタジオ」と思しき場所は…

b-flower『何もかもが駄目になってしまうまで』

無垢で無防備なコーラスから「グラジオラス 胸に抱いて」と軽やかに歌い出される1曲目「イノセンス ミッション」を聞いて、思わず頬が緩むとともに胸の奥がチクりと針で刺されたような気がした。22年ぶりにリリースされたb-flowerのニューアルバム『何かもか…

劇団フライングステージ第46回公演『Rihts, Light ライツ ライト』(2020/11/06 下北沢OFF・OFFシアター)

就職面接において、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染していることを告げなかったことを理由に内定を取り消されたことは違法だと訴えた「HIV内定取消訴訟」をモチーフにした物語。その原告男性へのインタビューと裁判記録を基にした「フィクション」である…

THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary LIVE-DOME SPECIAL-(2020/11/03 東京ドーム)

吉井和哉の笑顔が少ないライブだった。印象に残ったのは、涙こそ流れてはいないもののほぼ泣き顔で“JAM”を歌う姿や、ライブの最後の“プライマル”を歌い終わって歯を食いしばりながらマイクをマイクスタンドに戻す姿だった。でも、だからこそ、この日のライブ…

『行き止まりの世界に生まれて』

アメリカの、かつて栄えた工業の衰退により「the Rust Belt(ラストベルト:錆びついた工業地帯)」と呼ばれようになった地域のひとつイリノイ州ロックフォードを舞台に、スケートボードに生きる少年達を追ったドキュメンタリー映画。白人のザック、アフリカ…

スピッツ「猫ちぐら」

デジタル配信でリリースされたスピッツの新曲「猫ちぐら」。新型コロナウイルス感染症により、社会や生活のあり様が潮が満ちるように少しずつ、しかし確実に変化を強いられるなかで、メンバー同士が顔を合わせることなく「リモート」で製作されたこの新曲は…

THE YELLOW MONKEY 「未来はみないで」

2020年4月4日と4月5日に予定されていた、ザ・イエローモンキの東京ドーム公演は、新型コロナウィルス感染症の影響により「開催延期」となった――結成30周年を祝うバンド史上初のドームツアーが発表された昨年8月はもちろん、この新曲が発表された今年3月半ば…

『ジュディ 虹の彼方に』

映画『オズの魔法使い』で有名なミュージカル女優、ジュディ・ガーランドの伝記的映画『ジュディ 虹の彼方に』を観た。「ショウビジネスの光と影」「大スターの栄光と苦悩」というクリシェに落とし込まれがちな物語ではあるけれど、主人公をスターダムに押し…

ザ・クロマニヨンズ ツアー PUNCH 2019-2020 (2020/02/19 千葉市民文化会館)

通算13枚目のオリジナルアルバム『PUNCH』を引っ提げての全58本に及ぶ全国ツアーのホールライブ初日。新作でヒロトが<アア ヤヨイ マヂカ リリィ>(リリィ)と歌う声が頭の中で再生されて、まさに今の季節にぴったりだと思いながら、会場に向かった。ライ…

THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary DOME TOUR(2020/02/11 京セラドーム)

開演5分前、白いユニフォームが眩しいブラスバンドがステージ左右の端に並びフランク・シナトラの‟My way”を堂々と奏でた後、趣を変えてアッパーな演奏が始まったと思ったら、そのメロディは‟見てないようで見てる”だった。その演奏が進むにつれて徐々に会場…

THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary DOME TOUR(2019/12/28 ナゴヤドーム)

ザ・イエローモンキーが、現在のバンドメンバーで初めてライブをした日が、1989年12月28日。それから30年の時が流れ、バンドの30歳の誕生日でもありバンドのキャリア史上最大規模となるドームツアーの初日となったライブは、序盤、中盤、終盤と進むなかで、…

THE YELLOW MONKEY 「DANDAN」

ザ・イエローモンキーには12月がよく似合う。現在のメンバーになって初めてのライブが12月28日だったという「縁」もあるように、このバンドには、過ぎ去っていくことの感傷と新たに迎えることの希望が交錯する季節がとてもよく似合う。賑やかな風景の裏にあ…

劇団フライングステージ第45回公演『アイタクテとナリタクテ 子どもと大人のフライングステージ』(2019/11/2 下北沢OFF・OFFシアター)

1992年の旗揚げ以来、劇団フライングステージのお芝居の中で最も幼い主人公、小学生達の物語。お得意のメタシアターの手法で描きだされた物語は、可愛らしくも、「愛とは」「家族とは」そして「自分とは」――というこれまでの作品群に通低する一貫した問いを…

『ロケットマン』

エルトン・ジョンの自伝的半生を描いた映画『ロケットマン』を観た。エルトン・ジョンの名曲の数々をミュージカル仕立てで織り込んだ華やかさとは裏腹に、見終わった後に何とも言えない切なさと静かな強さが心に芽生えてくるような、そんな映画だった。 1.…

THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019-GRATEFUL SPOONFUL-(2019/7/7 さいたまスーパーアリーナ)

“天道虫”で派手に幕を開けたライブだった。テーマの異なる4種類のセットリストのうち、今回は「ハート」のセットリストだった。タイトルに「LOVE」とある曲が多く歌われたけれど、そういう歌ほど、セックスと真正面から向き合う反面、愛と真正面から向き合う…

THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019-GRATEFUL SPOONFUL-(2019/6/11 横浜アリーナ)

19年ぶりのオリジナルアルバム『9999』と同じく“恋のかけら”で幕を開けたライブは、「30周年」という時の流れを感じさせないというよりも、時の流れを味方につけたバンドだけが醸し出す「円熟」と「新鮮」が同居したライブだった。ロックバンドとして「脂が…

歴史と交わるということ、あるバンドの「甘美な挫折」に寄せて

永井純一(2019)「第7章 フジロック、洋邦の対峙」書評(『私たちは洋楽とどう向き合ってきたのか』,南田勝也編著,花伝社,pp.210-243) 1997年7月26日、2人のオーディエンスの経験 私が初めてザ・イエローモンキーのライブを見たのは、1997年7月26日のフ…

10年目の5月2日に

忌野清志郎が亡くなって10年、10年目の5月2日になる。清志郎の訃報を知った時のことは今でも鮮明に覚えている。夜のニュース番組で速報として伝えられたこと、ほどなくして友人から電話がかかってきたこと。電話口で友人が泣いていたこと。その時は「悲しい…

THE YELLOW MONKEY『9999』

ザ・イエローモンキー9枚目のオリジナルアルバム『9999』。活動休止、解散そして再集結を経ての19年ぶりの新作。バンドにとっても、ファンにとっても長い時間と「重い想い」を背負ったアルバムである一方で、1曲目“この恋のかけら”が進むにつれてこの新作が…

朝焼けデトロイト

出張でアメリカのデトロイトへ。デトロイトの日の出は遅く、7時過ぎ。 郊外も都市部も、アメリカには「影」がないと思った。全てが白っぽい光に当てられ広がっていた。ふと、Fountain of Wayneの音楽を思い出した。 それは巨大なショッピングモールの明るさ…