THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2016(2016/07/09 さいたまスーパーアリーナ)

この日のライブを観てしまうと、「素晴らしい」と心の底から思った2か月前の国立代々木競技場第一体育館でのライブでさえも、このバンドにとってはまだ「硬かった」のだと実感した。あれから、2か月が経って、まさに蛹が蝶になって飛び立ったような、そんな鮮やかさと力強さに貫かれたライブだった。ほぼ3時間を通してその一瞬一瞬に興奮と感動があるという、ライブの醍醐味をこれでもかと味あわせてくれるライブだった。これは「ザ・イエローモンキーのライブ」というひとつのジャンルなのではないかと思うほどに―−。

ありきたりな表現ではあるけれど、吉井和哉はまさに「水を得た魚」のようだった。2か月前のライブでは、どことなく「かつてのイエローモンキーの吉井和哉」をなぞっているようにも感じられたパフォーマンスも、“FINE FINE FINE”や“HOTEL宇宙船”などで完全に「2016年のイエローモンキーの吉井和哉」に進化していた。吉井和哉は、ザ・イエローモンキーのメンバーであることの安心と満足に満たされて、子どものような自由奔放さと、性別や年齢で説明できない色気をまとっていた。それは吉井和哉以外のメンバーにも共通していて、メンバー全員がステージの上で輝いているというその存在感は、ロックバンドの理想形だった。

歌唱力も演奏力も15年前から確実にビルドアップしてアリーナクラスの空間を余裕で掌握しつつも、それが単に演奏力が増したというのではなく、イエローモンキーの曲に込められたどこか切なくどこか儚い世界観をより感じさせてくれるところが素晴らしいと思った。イエローモンキーの曲には「花」がよく歌われている。この日のライブを通してふと、白い可憐な花を思い浮かべた。“LOVERS ON BACKSTREET”の家族を失った娼婦が差し出す花も、“カナリヤ”の悲観の先に咲いた花も、そして“球根”の魂に根を増やした花も、どれも悲しさや寂しさが浄化されたような繊細な佇まいをしている、そんな気がした。
迫力と繊細、卑猥と純粋、屈折と真摯――そんな説明しがたい二面性を手放すことなくむしろこだわり続けて、誰もが「かっこいい」としか言いようがないロックバンドとなったイエローモンキー。アンコールの1曲目“Romantist Taste”のイントロで、この記念すべきメジャーデビュー曲が「オリコン初登場223位」(!)だったと告げた吉井和哉の表情がどこか誇らしげだったのは、自分の、バンドの美意識を譲ることなく辿りついた光景が目の前にあったからなのだと思う。

ライブの終盤、吉井和哉は「ザ・イエローモンキーの吉井和哉」をフルネームにしても構わないと言っていた。上機嫌で冗談めかして言ったけれど、本心なのだろうと思った。自分の生い立ちや生きざまを投影した「自分の人生を実現するためのバンド」から、「バンドを実現するための自分の人生」へという転回が、この再集結にあたって少なからず吉井和哉にはあったのだろうと感じた。つまり、「吉井和哉のザ・イエローモンキー」から「ザ・イエローモンキーの吉井和哉」へという変化が。そういう変化とともにある吉井和哉が、この先「ザ・イエローモンキーの吉井和哉」としてどんな新しい歌を歌うのか、見届けたいと思う。

やはり、「いいライブ」としか言いようのないいいライブだった。

THE YELOOW MONKEY セットリスト(2016/07/09)
プライマル。
楽園
ROCK STAR
Chelsea Girl
A HENな飴玉
Tactics
LOVERS ON BACKSTREET
FINE FINE FINE
球根
カナリア
HOTEL宇宙船
花吹雪
空の青と本当の気持ち

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ALRIGHT
SPARK
見てないようで見てる
SUCK OF LIFE
バラ色の日々
悲しきASIAN BOY


−encore−
Romantist Taste
BURN
BURILLINAT WORLD
WELCOME TO MY DOGHOUSE
JAM