YOSHII KAZUYA STARLIGHT TOUR 2015(松戸・森のホール21 2015/05/02)

ライブ終盤、「ありがとう、行ってきまーす」と、吉井和哉は清々しい笑顔で旅立ちを告げていた。セットリストが進むほどに声が伸びやかに、動きが軽やかになっていくその様子には、新作『STARLIGHT』とこの日から始まるツアーに対する確かな手ごたえと期待が感じられた。ステージの上の自信と満足が、客席の感激と興奮とぴったりと重なっていくような、ライブだった。

セットリストがユニークだった。渋さと切なさと明るさと力強さが絶妙なバランスで互いを引き立てているようなセットリストだった。新作を中心としつつ、かつての曲が新作のモードに重なりながらもその幅と奥行を広げていた。久しぶりに“人それぞれのマイウェイ”が聞けてとても嬉しかった。

個人的に一番楽しみにしていた“ROUTE69”もとても良かった。赤黒い空を背にして歌う吉井和哉の影はとても美しかった。別れを歌っていながらあまり悲しい感じがしないのは、たとえ「別れ」に行き着いたとしても、歌の主人公がその愛に誇りを感じているからなのだと思った。

そして、アンコールの1曲目、ピアノとドラムだけをバックに歌い出した“STRONGER”。ステージに登場しても照明を灯さず、第一声とともに照明に照らされて暗闇から浮かび上がった吉井和哉は、産声をあげているようだった。まさに「プライマル・スクリーム」だった。

いなくなって追いかけても泣きながら叫んでも
帰ってくることもなく笑っているだけなんだよ


だから僕を見て いまちゃんと見て
生きてるこの瞬間を君の目に焼き付けて

この世で一番「強い歌」は、去っていく親の背中を追いかけて泣き叫ぶ子どもの声なのかもしれない。けれど、それを歌うことは寂しさに圧倒されることでもあるから、その歌はいつの間にか封印されてしまう。封印されても心の底にあり続ける寂しさを飼いならそうと、人はそれを薄めたり、言い換えたり、はぐらかしたりする歌をたくさん歌うのかもしれない。だから、この曲で自分の内なる寂しさを薄めたり、言い換えたり、はぐらかしたりすることなく正面から歌った吉井和哉には、自分の寂しさと和解した人間の強さがある。曲のタイトルが意味するのは、そういうことなのだと思う。

3階席から見ても、それでも、吉井和哉はキラキラと輝いて見えた。いいライブだった。

吉井和哉セットリスト(2015/05/02)
Hattrick'n
ビルマニア
ROCK STAR(THE YELLOW MONKEY)
紅くて咲こうとした恋の
迷信トゥゲザー
MUDDY WATER
いすゞ
人それぞれのマイウェイ
TOKYO NORTH SIDE
Route69
MUSIC
点描のしくみ
Step Up Rock
クリア
You Can Believe
MOONLIGHT DRIVE (THE YELLOW MONKEY)
(Everybody is)Like a Starlight



−encore−
STRONGER
FLOWER
WEEKENDER
FINAL COUNTDOWN
ボンボヤージ