YOSHII KAZUYA STARLIGHT TOUR 2015(東京国際フォーラム 2015/07/15)

梅雨明け間近の夏の陽射しが和らぎ始めた夕暮れに、人影まばらな灯りの消えたNHKホールの前に到着して、この日のライブ会場が東京国際フォーラムだったことに気づいた。この時すでに、開演時間の20分前。渋谷から有楽町へ向かうタクシーの窓から見た、柔らかにオレンジに染まった東京は綺麗で、このままもうしばらくタクシーに乗っていたいような気もした。吉井和哉のライブを観たくないわけではなかったけれど、不思議と流れに身を任せていたい気分だった。ライブ会場を間違えた自分を責める気持ちよりも、こうして間違えたことが今の自分の「心のかたち」なんだという妙な納得があった。そして、開演前のSEが途切れて会場が真っ暗闇になったところで、自分の席に滑り込んだ。その瞬間、吉井和哉が歌い出した。

1曲目は“STRONGER”。5月に観たツアー序盤のライブではアンコールの1曲目に歌われていたこの曲がライブ本編の1曲目になったことで、ライブは「赤ん坊の泣き声」(STRONGER)で始まって「老人の祈り」(ボンボヤージ)で終わるのだなと思った。5月のライブのセットリストにはなかった“バラ色の日々”や“BEAUTIFUL”も含めて、新作『STARLIGHT』をひっさげてのツアーは終盤となって、星や月や空が登場する曲を愛でるというコンセプチュアルな趣きよりも、もう少し重いアーティスト自身の問いを差し出すような、メッセージのあるものに変わっていた。

今回のツアーで、7月に東京国際フォーラム吉井和哉のライブを観ることになったとき、4年前の7月に同じ場所で観た吉井和哉のライブid:ay8b:20110703のことを思い出した。“球根”を歌う吉井和哉を観て泣いたことを。そのことを、4年前の私はこんなふうに書いていた――。

1ヶ月前のNHKホールでの感動があっさりと席を譲って今ここのそれに取って代わっていく。そして、あぁ、この人には涙がいっぱい詰まっているんだなぁと思った。吉井和哉に対して初めてそんなふうに思えた。そうしたら、涙がぽろぽろと止まらなくなった。歌い終えた後のおじぎ姿には、もうなんて形容したらいいのか分からない気持ちになった。

それから4年経った今回のライブで、私は泣かなかった。吉井和哉の歌を聞きながら、4年前とは違う気持ちで、違うことを考えて、違う人の面影を追っていた。ステージで歌う吉井和哉もまた「涙がいっぱい詰まっている人」ではなかった。けれど、そのことを寂しいとは思わなかった。今の吉井和哉に何が詰まっているのかは分からなかった。けれど、変わり続ける吉井和哉に出会い続けることに吉井和哉の音楽を聞く意味があると思った。仮にその出会いが途切れることがあったとしても、またどこかで再会できるという確信もある。ちょうど“クリア”の中で笑顔で手を振りながら<その日までお元気で/ずっとずっとお元気で>と歌っているように。

アンコールのMCで吉井和哉は、『STARLIHT』はソロになってから8枚目のアルバムで、イエローモンキーは8枚のアルバムで終わったから次のアルバムが9枚目となることが感慨深い、というようなことを話した。その語り口は、これから進むべき方向や奏でたい音楽のヴィジョンがはっきりと見えているというよりは、とにかく前に進むということを自分自身に言い聞かせているような、そんな気がした。吉井和哉の新しい音楽がどんな音楽になるのか、そしてその音楽に自分は何を思うのか、今はちょっと想像がつかない。でも、そこでまた私は自分の「心のかたち」を発見するのだろうと思う。

吉井和哉セットリスト(2015/07/15)
STRONGER
Hattrick'n
ビルマニア
I Love you Baby(THE YELLOW MONKEY)
紅くて咲こうとした恋の
迷信トゥゲザー
人それぞれのマイウェイ
TOKYO NORTH SIDE
MUDDY WATER
審美眼ブギ(THE YELLOW MONKEY)
Route69
MUSIC
点描のしくみ
Step Up Rock
クリア
You Can Believe
バラ色の日々(THE YELLOW MONKEY)
(Everybody is) Like a Starlight


−encore−
BEAUTIFUL
VS
LOVE COMMUNICATION(THE YELLOW MONKEY)
FINAL COUNTDOWN
WEEKENDER
ボンボヤージ