吉井和哉

『STARLIGHT』

かつてボブ・ディランが<Ah but I was so much older then, I am younger than that now(あの頃の僕は今よりずっと年老いていて、今の僕はその頃よりも若い)>と歌ったように、吉井和哉の新作『STARLIGHT』は、ソロデビューから10年以上を経て、ソロ7作目に…

「クリア」

新曲の“クリア”“ボンボヤージ”に加えて、ソロになってからのライブで演奏されたイエローモンキーの楽曲が収録されたこのシングルのなかで、吉井和哉は3種類の服を着ていると思った。“クリア”が真新しい服で覚えたてのステップを披露しているとしたら、イエロ…

YOSHII KAZUYA SUPER LIVE 2014〜此コガ原点!!〜(2014/12/28 日本武道館)

11月にリリースされたカヴァーアルバムのサブタイトル(「此レガ原点!!」)を1文字だけもじったサブタイトルを持つ、吉井和哉2年ぶりの武道館公演。それは映画に例えるならば、てっきり「スピンオフ(番外編)」だと思って観ていたら、実は新しく始まる本編の…

『ヨシー・ファンクJr.〜此レガ原点!!〜』

カヴァーアルバムには大きく2種類がある。一つは「トリビュートアルバム」と呼ばれる、複数のアーティストがある特定のアーティストやバンドの曲をカヴァーしたもの。もう一つは、一人のアーティストが自分以外の複数のアーティストの曲をカヴァーしたのもの…

10th Anniversary YOSHII LOVINSON SUPER LIVE(2013/12/07 さいたまスーパーアリーナ)

このライブが発表された時は、なぜこのタイミングで、なぜこんなにキャパシティの大きい会場で、なぜ「YOSHII LOVINSON」と銘打ったライブなのだろう、と思った。ライブが始まる直前まで、そんな思いが心の隅っこにあった。 けれど、1st『AT THE BLACK HOLE…

『パンドラ ザ・イエローモンキー PUNCH DRUNKERD TOUR THE MOVIE』(2013/09/28)

公開初日に神戸の映画館で観た。劇中のライブ映像の激しさや華やかさとは裏腹に、しみじみとした静かな感動といつまでも胸の中に波紋を広げる切なさが残った。観て良かったと思った。1998年4月から1999年3月にかけて行われた113本に及ぶ「PUNCHD RUNKERD TOU…

TOUR 2013 GOOD BY YOSHII KAZUYA(2013/03/23 ホクト文化ホール)

府中で約1か月前に観たライブについて、私はこう書いたid:ay8b:20130304。「いいライブだった。『素晴らしいライブだった』と言い切っても惜しくないほど、いいライブだった」。それから約1か月が経ってもう一度ライブを観た今、こんなふうに書いたことを少…

TOUR 2013 GOOD BY YOSHII KAZUYA(2013/02/27 府中の森芸術劇場 どりーむホーム)

いいライブだった。「素晴らしいライブだった」と言い切っても惜しくないほど、いいライブだった。リズムを強調したファンクっぽいアレンジの“トブヨウニ”で始まったライブ。その開放感と相俟ってステージの上の吉井和哉はとても「健やか」だった。ステージ…

Don't Look Back in Anger

吉井和哉のソロアーティストとしての初めてのベストアルバム『18』を一言で表すとしたら、「感慨深い」という言葉になる。これまでにいろんなアーティストやバンドのベストアルバムを聞いていたけれど、こんなに「感慨深い」と感じるのは初めてのような気が…

YOSHII BEANS(2012/12/28 日本武道館)

毎年恒例となった12月28日の「YOSHII BUDOKAN」は、今年はFC会員限定の「YOSHII BEANS」。ステージを映す大型スクリーンはなかったけれど、客席のどこにいても吉井和哉の存在を身近に感じたのではないかと思えるような、ステージと客席の距離感の近いライブ…

YOSHII KAZUYA .HEARTS TOUR 2012(2012/11/29 日本武道館)

とても感慨深いライブになった。 年末恒例の12月28日の「吉井武道館」でもなく新作アルバムを携えてたツアーでもない武道館でのライブは珍しいなと感じていた。正直、今このタイミングで武道館でライブをする必然性は何なのだろう、とも思っていた。 ライブ…

SUMMER SONIC 2012(2012/08/18 QVCマリンフィールド&幕張メッセ)

ライブ前スタンド席から空を見ると、スタジアムの真上に灰色の厚い雲がかかっているけれど、その向こうの海の上の空は明るくて、なんとなく「吉井和哉らしい空」だなと思った。 ライブが始まってから雨が本格的に降り出して、降ったり止んだりしながら最後に…

『BLUE APLES〜born-again〜』

武道館公演のDVD化としては2007年の「YOSHII BDOKAN 2007』以来4年ぶり。ライブDVDのリリースとしては,昨年前半の「FLOWERS&POWERLIGHT TOUR 2011」を収めた『LIVE APPLES』から約5ヶ月という短いインターバル。意外なようで納得がいく。このライブは「これ…

Flowers & Powerlight Tour 2011 〜born-again〜(2011/12/28 日本武道館)

毎年恒例の「YOSHII BUDOKAN」と重ねた形での「Flowers & Powerlight Tour 2011 〜born-again〜」のツアーファイナル。ツアー中と変わらないセットリストの潔さは、春のツアーも含めて今年1年をかけて歩んできた「旅」への自信とこだわりなのだと思う。 歌も…

Flowers&Powerloght Tour 2011〜born-agin〜(2011/12/09 千葉県文化会館)

ライブの後、何度もセットリストを眺める。何度眺めても面白いセットリストだと思う。だからこそ、1曲ごとにとても鮮明な印象が残っている。男女の天使が印象的なスタイリッシュな映像を背にして暗がりの中で静かに歌われた“Born”から一転して新たに生み落と…

『AfterThe Apples』

とにかくボーカルが素晴らしい。 さまざまな表情を持ちながらも、リズムが目立つアレンジや弾き語りに近いミニマムなトラックは、野太くて艶のある歌声を際立たせる。特に“Next Innovation”と“ダビデ”のボーカルの熱の帯び方と放ち方。曲の終わりに向けて静…

Flowers & Powerlight Tour 2011(2011/07/01 東京国際フォーラム)

この日のライブが自分のなかの深いところにいつまでも残ると確信した。「心に残る」「胸に刻まれる」という言葉は感動の比喩ではなくて、感動そのものだと思った。“球根”につながるピアノソロ。鍵盤が“恋の花”のメロディをかすめるところでもう胸がいっぱに…

Flowers&Powerlight Tour 2011(2011/06/02 NHKホール)

開演から30分遅れで席に着いたとき*1、吉井和哉はこの会場では何度もライブをしたことがあると話していた。 NHKホールの3階席から見下ろすステージは、黒い地面に細長い何かが突き刺さっているように見えた。けれど、MCが終わって“おじぎ草”を歌い始めた吉井…

『The Apples』

吉井和哉の新作を初めて聞くとき、前作からの変化を予感しつつも、いつも必ず予想を裏切られる。そして、繰り返し聞くうちに、その変化はこれまでの彼の作品のなかで予言されていたのだと気づく。吉井和哉6枚目のソロアルバム『The Apples』。真の意味でのタ…

「FLOWER」(2011/03/18 ミュージックステーション)

東日本大震災から1週間が過ぎた2011年3月18日。生放送の「ミュージックステーション」で吉井和哉は歌った。 番組の始まりから終わりまで、その表情はずっとこわばったままで、沈痛や神妙さのなかに憔悴さえ感じられた。頬の窪みと皺がより深く濃くなっていた…

「LOVE&PEACE」

静かなギターで始まり、歌い出しの言葉は<プリーズ>。僕は救世主ではないし、君さえ救えないかもしれない――そんな無力さから出発する吉井和哉の「愛と平和」の歌。 何も変わらないという絶望と、それでも何かが変わると信じる希望に引き裂かれるかのように…

YOSHII BUDOKAN 2010(2010/12/28 日本武道館)

ユニオンジャックを背中に貼り付けた真っ赤なコートで登場したその瞬間から、吉井和哉は自信満々だった。新曲“アシッドウーマン”のへヴィさでさらっとライブの幕を開けてしまうその姿は憎たらしいほど堂々としていた。東スタンドから見下ろしたその背中はギ…

YOSHII BUDOKAN 2009(2009/12/28 日本武道館)

素晴らしいライブだった。これまでの武道館公演で最もフラットなライブの始まりとなった“JUST A LITTLE DAY”。歌い出しこそ少しこもって聞こえたボーカルも、サビに差しかかる頃には、伸びやかに。ドラムのジョシュ・フリースを再び招いたバンドに見劣りする…