THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary LIVE ーBUDOKAN SPECIAL-(2020/12/28 日本武道館)

企画・制作TYMS PROJECTからの新型コロナウイルス対策とその協力への感謝のアナウンスの後、開演直前の日本武道館に流れたのは、ジプシー・キングスの“マイ・ウェイ”――映画『パンドラ』の中で、1998年から1999年にかけて行われた年間133本に及ぶ「PUNCH DRUNKERD TOUR」の最終日の楽屋で吉井和哉がかけていた曲だった。それは、今日また、バンドにとってまたひとつのツアー、ひとつの季節が終わることを告げていて、心の深いところに静かに針が刺さるような切なさがあった。

新型コロナウイルス感染症により延期となった今年4月の東京ドーム2dayに代わって11月から始まった「THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary LIVE」4公演の最終公演であり、昨年の同じ日名古屋ドームから始まった一連の30周年ライブの最終公演であり、そして2016年1月の再集結からの5年間にわたるバンドの「シーズン2」の最後のライブという、3つの「終わり」が重なったこの日のライブは、コロナ禍という終わりの見えない状況と交差して、不思議な余韻を残すライブだった。と同時に、ステージ全体が見下ろせる2階スタンド席から見たザ・イエローモンキーは、コロナ対策による舞台配置とシンプルなセットゆえにいつもより間近で、そして眩しかった。

ジプシー・キングスの“マイ・ウェイ”に続いて会場に流れたエディット・ピアフの“愛の賛歌”も含めて、この日のライブは「メカラウロコ」と銘打ってはいないものの、「メカラウロコ」以上に「メカラウロコ」なライブだった。セットリスト22曲中12曲がインディーズ時代から2ndアルバムの曲で占められていて、さらにバンド最初期のデモテープに収められた“PENITENT”がメジャーデビュー後初めて演奏された。ちょうど1年前の名古屋ドームから始まった3大ドームツアーの幕間(インターミッション)でバンドのライブ歴のアニメーションのBGMとして聞いた時はどこか軽妙な印象があったけれど、30年をサバイブしたロックバンドによる“PENITENT”は,不穏な単語が散らばった歌詞とひねくれているけれど耳に残るメロディとがより一層際立って、イエローモンキーの「原液」を味わうような濃さがあった。

1989年12月28日のイエローモンキーの「誕生日」にちなんでバンド初期のブレイク前の曲を中心に演奏するライブシリーズ「メカラウロコ」は2018年をもって終了したけれど、それと同様にイエローモンキーのオリジナリティの核となる美意識と底意地を披露したライブだった。けれど同時に、「12月28日の日本武道館」でのライブとして、「メカラウロコ」的なコンセプトから抜け出せない手詰まり感も、ほんの少しだが感じずにはいられなかった。

ライブ本編の最後を飾る“未来はみないで”の前のMCで、吉井和哉は「これからは『風の時代』になるんだよ」とエマに言っていた。あまり詳しくは説明していなかったけれど、占星術の「グレート・コンジャンクション」のことを言っているのかなと思った。2020年の12月22日に、約20年毎に起こる木星土星の会合(コンジャンクション)の待ち合わせ場所が「地の星座(牡羊座・乙女座・山羊座)」から「風の星座(双子座・天秤座・水瓶座)」へと変わり、これからの約200年は「風の時代」になる。それによって時代の価値観も変わる――。

先のMCを、占い好きの、スピリチュアルに親和性のある吉井和哉らしい発言だと思うと同時に、その発言に「彼らと同じ時代に生きている」ということに気づかされた。20年どころか200年あるいはそれ以上の、想像しがたいほどの長い長い星の時間の下で、同じ時代に生きて、同じ時間、同じ場所で呼吸していることの不思議を思った。コロナ禍の2020年12月28日に日本武道館で「待ち合わせ」したことの奇跡を感じた。だから、<また会えるって 約束して>というフレーズがこれまで以上に胸に刺さった。

アンコールの最後、イエローモンキーの「シーズン2」の最後を締めくくる“WELCOME TO MY DOGHOUSE”を歌い出す前、吉井和哉は「シーズン1」の活動休止前最後の2001年の東京ドームライブでのMCに重ねるように「普通の野良犬に戻ります」と告げた。また、少しおどけた口調で「またお会いしましょう」とも言った。その言葉を聞いて、丁寧な別れの挨拶よりも、いつだって明日にだってまた会えそうな軽い別れの挨拶の方が寂しさの余韻が残るような気がした。けれど、「何も話すことはない」というMCの率直さがどこか清々しかったように、ザ・イエローモンキーの「シーズン2」としてやり切ったのだとも思った。だから、感動や感慨とともに、それ以上に、バンドに対する「愛しさ」が残るライブだった。

ザ・イエローモンキー
2016年1月8日 再集結
2020年12月28日 無期限充電期間へ
次の「待ち合わせ」を信じて、楽しみに待っています。

THE YELLOW MONKEY セットリスト(2020/12/28)
DANDAN
Subjective Late Show
Chelsea Girl
FAIRY LAND
Tactics
VERMILION HANDS
Changes Far Away
審美眼ブギ
Foxy Blue Love
SLEEPLESS IMAGINATION
PENITNET
ロザーナ
‟I”
バラ色の日々
SUCK OF LIFE
Father
未来はみないで

 

―encore―
おそそブギウギ
アバンギャルドで行こうよ
Romantist Taste
悲しきASIAN BOY
WELCOME TO MY DOGHOUSE