YOSHII KAZUYA STARLIGHT TOUR 2015(NHKホール 2015/05/13)

5月の新緑が鮮やかな快晴の日。<愛が終わりのない青空に吸い込まれた>(クリア)のは、こんな青空だったのかもしれないと思うほどの。
5月2日から始まったツアー4本目にして、さらにパワーアップ、ヴァージョンアップした吉井和哉がいた。その確信はライブが始まって間もなくステージから客席に広がった。2曲目の“ビルマニア”のアウトロで親指を立てながらの満足気な表情、3曲目の“LOVE COMUNICATION”が終わったところでの「もう(すでに)、いい」という言葉。今の吉井和哉は本当に調子がいい。

ライブのピークは“Step Up Rock”以降の、ポジティブなベクトルを持つ新作の曲を畳みかける本編終盤にある。けれど、その対比もあってか、ライブ前半から中盤の“淡くて咲こうとした恋の”*1“迷信トゥゲザー”“TOKYO NORTH SIDE”の憂いのある曲の良さもまた際立っていた。

直前のMCで、占いにはまった時期があったこと、占いでいろんなことを言われてわけが分からなくなったこと、そして結局分かったことは「自分を信じること」だと語った後の“You Can Believe”。間奏で力強く「俺が一番正しい。なぜなら、俺の人生だからだ」と言い放ったその姿は何とも眩しかった。真っ暗闇のトンネルをひたすら前を向いて手探りで進んでいる途中でふと上を向いたら満天の星空が輝いていたというような、出口は前ではなく上にあったというような、思わぬ「トンネルの抜け方」をした爽快な雰囲気が今の吉井和哉にはある。けれど同時に、ステージの上でぴょんぴょんと飛び跳ねるその姿には、前を向いて迷いながらも進み続けた時間が決して無駄ではなく、アーティストとしての確かな血肉になっているという説得力がある。

今回印象に残ったのは、アンコール2曲目の“FLOWER”。

あれから何年経ったんだ?
相も変わらずこんなんだ
だけど毎日をできるだけgoodに
自分の血を愛せないと
人は愛せないとわかた
それは悪いけどたぶん本当だ

2011年の3月末にリリースされた前作『APPLES』の最後を飾った曲。3月11日よりも前に完成していて、震災後初めて放送されたテレビの音楽番組で吉井和哉が歌った曲id:ay8b:20110319。その生放送そしてその後の「FLOWES & POWER LIGHT TOUR 2011」で原曲の<だけど毎日はそれなりにgoodだ>というフレーズを<だけど毎日をできるだけgoodに>に変えて歌っていたように、今回のツアーでも吉井和哉はこの箇所を<できるだけgoodに>と歌っている。歌い出しの<あれから何年経ったんだ?>というフレーズがまさに「震災後」の時間の経過を浮かび上がらせていると感じるとともに、アーティストとの意図を越えて「背負うことになった歌」を、その重みを引き受けるように歌う吉井和哉の姿に、アーティストとしての逞しさと誠実さを感じた。
吉井和哉のアルバムの最後の曲には、吉井和哉の現在地を照らし出すとともにそこからさらに歩んでいく未来を予言する重要な意味がある。前作『APPLES』の最後で<さあ花のように さあ揺るぎなく/大雨が止んだらつぼみ開こう>(FLOWER)という励ましが、新作『STRALIGHT』の最後の<花吹雪が静かに舞う>(クリア)光景につながっているように思えた。そして、それが悲しい風景ではなくいろいろな色や形をした悲しみが浄化されるような明るい風景に見えることが感慨深いと思った。

吉井和哉セットリスト(2015/05/13)
Hattrick'n
ビルマニア
LOVE COMUNICATION(THE YELLOW MONKEY)
紅くて咲こうとした恋の
迷信トゥゲザー
MUDDY WATER
いすゞ
人それぞれのマイウェイ
TOKYO NORTH SIDE
Route69
MUSIC
点描のしくみ
Step Up Rock
クリア
You Can Believe
MOONLIGHT DRIVE (THE YELLOW MONKEY)
(Everybody is)Like a Starlight


−encore−
STRONGER
FLOWER
WEEKENDER
FINAL COUNTDOWN
ボンボヤージ

追記:開演前にマジックを貸してくれて、ライブ後にアーモンドチョコレートをくれた方、ありがとうございました!! (深謝)。

*1:曲の途中に挿まれた「天国は墓場というところ。墓場まで持っていくということは、宇宙に持っていくということ」という語りが印象的だった。