THE YELLOW MONKEY 「DANDAN」

ザ・イエローモンキーには12月がよく似合う。
現在のメンバーになって初めてのライブが12月28日だったという「縁」もあるように、このバンドには、過ぎ去っていくことの感傷と新たに迎えることの希望が交錯する季節がとてもよく似合う。賑やかな風景の裏にある切なさと、それを大切に抱えつつも次なる場所へと進む姿は、まさにこのバンドの歩み方を思い起こさせる。
結成30周年を記念した新曲「DANDAN」を初めて聞いたとき、まさにそんな季節の風景が、その温度や空気の匂いまで感じられるようで、「まさに、ザ・イエローモンキーの」新曲だと思った。

ブラスが華やかさを添えるイントロで「どこかで聞いたような・・・」と思わせつつも、「あぁ、イエローモンキー!」と感じられる軽快・軽妙なメロディ、「周年セール」「離岸流」などおそらく日本語のロックンロールで初めて歌われるであろう言葉を巧みに散りばめた歌詞――そこはかとない懐かしさと確かな余裕を感じさせるこの曲は、「30年目の新人」のようなみずみずしさと軽みを湛えていて、何度も何度も繰り返し聞いている。特に、冬の晴れた日の朝の空気に、この曲はよくなじむ。
そして、曲の終わり、吉井和哉はこんなふうに歌う。

どんな夢も叶えるあなたに会えたよ
どんな痛みにも耐えるあなたに会えたよ

もしこの2行の順番が入れ替わっていたら、曲の印象はだいぶ変わるような気がする。だからこそ、やはり「どんな痛みにも耐えるあなた」を曲の最後に歌うところに、吉井和哉から吉井和哉自身への、バンドメンバーへの、そしてファンへの信頼と感謝を感じる。

そして、「DANDAN」というタイトル。このタイトルが象徴するように、イエローモンキーの30年の歩みとは、魔法の絨毯やジェットコースターに乗って運ばれることではなく、「正しかった出会い」と「間違った出会い」をくり返しながら、長い階段を一歩ずつ登ることだったのだと思う。長い階段の途中で、振り返った時に見下ろした景色に感じる愛おしさのような感情もまた、この曲の通底音になっている。

バンドが30歳となる12月28日を皮切りに、バンドのキャリア史上最大規模となる東名阪ドームツアーが始まる。イエローモンキーはまた一つ階段を登ろうとしている。そのライブのセットリストにこの曲がどう組み込まれるのかが楽しみだ。冒頭でも、終盤でも、アンコールでも、ライブのどこで歌われても、この曲は映えるだろう。

ドームツアーの4公演、全て見届けようと思う。 

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