THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2016−YOKOHAMA SPECIAL−(2016/08/03 横浜アリーナ)

このライブ以前、私が最後に横浜アリーナでライブを観たのは、2000年5月のザ・イエローモンキーの「SPRING TOUR」だった。それから16年。過ぎたのは「時間」ではなく「季節」だったのだと思う。

1997年の“FIX THE SICKS”ツアーを髣髴とさせる演出とともに始まったライブの1曲目は“RAINBOW MAN”。この1曲目だけで、再集結ツアーの只中に発表されたこの横浜アリーナ2daysが単なる追加公演ではなく、「YOKOHAMA SPECIAL」というサブタイトル通り特別なライブであることが伝わってきた。その思いがライブ全編から滲み出ているというよりも溢れ出ていたライブだった。ザ・イエローモンキーのバンドヒストリーにおいて、横浜アリーナという会場がその都度忘れられない思い出の舞台となってきことを改めて感じるとともに、横浜アリーナという会場でザ・イエローモンキーが駆け抜けてきたそれぞれの「季節」を思った。
バンドの、そして90年代邦楽ロックの傑作『SICKS』を携えて、創作・売上(動員)・評価の全てがピークを迎えた初のアリーナツアー“FIX THE SICKS”(1997年)という「真夏」。1年間で113本という超人的なツアーの達成と、その過程におけるバンドとしての疲労と喪失を伴った“PUNCH DRUNKERED TOUR”(1998−1999)という「秋」。この日のライブで吉井和哉自身が告白していたように、ツアータイトルとは裏腹にバンドの行き詰まりを感じさせた「SPRNG TOUR」(2000年)というバンドの「冬」。そして、それから16年を経て、蛹が青い蝶に孵って飛び立った「THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR」(2016年)という、ようやくたどり着いた「春」。
ライブ本編の終盤、“バラ色の日々”の前に、吉井和哉自身が「長い」と自嘲していたMCが、長くならざるを得なかった理由がよくわかる気がした。かつてこのバンドがこの会場で駆け抜けた季節の重みを思えば、16年という時を経て、この会場で、再びザ・イエローモンキーとして「春」を迎えるということは、やはり奇跡に近いものなのだということ。“バラ色の日々”を歌う吉井和哉はずっと泣いているように見えたのは、気のせいではないと思う。

吉井和哉の、ライブのハイライトとなった“天国旅行”でお辞儀する姿、“SO YOUNG”のイントロでドラムセットの前からスタンドマイクに歩み出て歌う姿は、その曲をファンだけでなく、会場に捧げているようでもあった。今この瞬間、この場所で、この曲を自分が歌っている意味というものを考え、感じながら歌うアーティストのその歌は、単なる感傷や感慨を超えて胸を打つものがあった。そして、この2曲に留まらず、個人的には“ゴージャス”と“創生児”がとても印象深かった。ボーカルが放つ熱量、曲の世界観を演じ切ることの徹底という点で、吉井和哉はかつての吉井和哉を超えているだけでなく、おそらく多くの他のボーカリストをも超えているように感じた。そして、それは同時に、そんなボーカリストを擁しつつも、ひけをとらない存在感と演奏力を持つメンバーの凄さを感じることでもあった。

“SPARK”と“LOVE LOVE SHOW”で、吉井和哉は客席へと下る花道をさらに先に進み、客席の通路にまで降りてきた。かつて、16年前の「SPRING TOUR」で客席にダイブした時には、その行為にむしろ吉井和哉の焦りや自信の無さを感じて不安になったことを思い出した。けれど、この日、ファンの間を進む吉井和哉の表情には覚悟と確信のようなものが感じられて、頼もしいとさえ思った――おそらく、ザ・イエローモンキーのライブを観て不安になることは、もうないような気がする。それはなぜか少し寂しいような気もするけれど、それはやはり幸せなことなのだと思う。

THE YELOOW MONKEY セットリスト(2016/08/03)
RIANBOW MAN
ROCK STAR
サイキック No.9
TVのシンガー
ゴージャス
Tactics
天国旅行
創生児
HOTEL宇宙船
花吹雪
空の青と本当の気持ち
ALRIGHT
SPARK
見てないようで見てる
SUCK OF LIFE
バラ色の日々
悲しきASIAN BOY


−encore−
パール
LOVE LOVE SHOW
SO YOUNG
WELCOME TO MY DOGHOUSE
JAM