THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2017(2017/12/09・10 東京ドーム)

素晴らしいライブだった。
この「素晴らしい」という言葉が、これまでのイエローモンキーのライブと同じ基準によるものではなく、その基準自体が更新されたような感覚があったという意味で「素晴らしい」ライブだった。2001年1月以来、活動休止、解散そして再集結を経た「約17年ぶり」という感傷や感慨以上に、驚きと新しい感動があった。
再集結後のアリーナツアー、そして今回の東京ドーム2daysのライブ名に「SUPER」という言葉を付していることの意味がすとんと腑に落ちるライブだった。「ザ・イエローモンキーで、ザ・イエローモンキーを超えていく」という覚悟と手応えを感じたライブだった。

ドーム中央の花道の真ん中の卵がパンっとはじけて現れた4人が演奏した“WELLCOME TO MY DOGHOUSE”。たった4人のシンプルな演奏にもかかわらず5万人を惹きつけるに十分な存在感だったことがまず驚きでもあり感激だった。その後の、花道からステージに移動した後の“嘆くなり我が夜のFantasy”や“I LOVE YOU BABY”なども、原曲そのままのストレートな演奏がすっかりスタジアムライブの演奏になっていた。
もちろん、曲ごとに計算され作り込まれた照明や効果プロジェクションマッピングなどの効果は絶大だった。けれど、そうした舞台演出のテクノロジーがあれば「東京ドームのライブ」として成立するわけではないのだということ。それを手段にして実現したいライブ像(ビジョン)とそれを実現するための力(パワー)がなければ、それは成立し得ないのだということ。2001年1月のイエローモンキーの東京ドームのライブにはなかったビジョンとパワーが今回のライブにはあった。
「東京ドームでライブをすること」と「東京ドームに見合うライブをすること」という2つがあるとしたら、今回のライブは完全に後者にだった。バンド自身がそれを意識してライブ望んでいることが、セットリスト、演奏、演出のすべてから感じられるライブだった。さらに言えば、1日目は中盤までどこか硬さのあった吉井和哉のパフォーマンスが、2日目にはライブ冒頭のMCでの「(東京ドーム)の勝手がわかってきた」という言葉通り、ライブの始めから東京ドームでのライブに対する自由奔放さと自信を感じさせるものにさえなっていた。

だから、今回のライブでは、演奏がスタジアムライブ級にスケールアップしたというだけでなく、スタジアムライブで演奏されることで曲自体がその趣を変えたと思える曲もいくつかあった。前半のハイライトとなった“天国旅行”から“真珠色の革命時代 (Pearl Light Of Revolution)”。曲の世界観に忠実にかつ迫力をもって突きつけたような“天国旅行”の後、ステージを覆っていた砂嵐を映し出す幕が上がり、美しい弦楽奏ともに現れた満点の星空に切り替わった“真珠色の革命時代”。それは、ガラス細工のように繊細なグラムロックの美意識を内包しつつも、朝日から夕日までを映す大海原の映像が示唆していたようによりスケールの大きな名曲に変質しているような感覚を覚えた。
ライブで何度も聞いていた曲が趣を変え、今までとは違うライブの体験となったのは、本編の「第2部」とも言える中盤の演出過剰とも思える“太陽が燃えている”から“LOVELOVESHOW”の流れだった。これらの曲の見せ方(魅せ方)に、「東京ドームでのイエローモンキー」がどうあるべきか、ということに対するバンドとしての一つの答えがあったような気がした。
特に、メンバーを映すスクリーンに重なる炎の映像が激しすぎて笑わざるを得ない“太陽が燃えている”とともに、「演出が強すぎて歌が入ってこない(笑)」というこれまでにないライブ体験になった“LOVE LOVE SHOW”が強烈だった。イントロと同時にステージの左右に開脚した赤いハイヒールの女性の脚が膨れ上がり、「世界のおねえさん」として何十人もの外国人モデルが花道に登場した“LOVE LOVE SHOW”は、まるでローリング・ストーンズのスタジアムライブでの“Honky Tonk Woman”のようだった。それは、ロックバンドのスタジアムライブにおけるエンターテイメント性とイエローモンキーらしさの融合への挑戦を感じさせた。
と同時に、「美女を侍らせて歌う」という同じシチュエーションであっても、ミック・ジャガーとは対照的にどこか女性に遠慮がちで女性に弄ばれている佇まいになるところが、吉井和哉のロックスターとしての独特の存在感だと思った。外国人モデルがマネキンのように微動だにせず、曲のアウトロとともにビジネスライクに花道を降りていく姿(と、彼女達に取り残される吉井和哉)まで計算しての演出だったとすれば、やはり吉井和哉は「ロックスター吉井和哉」のことをとてもよく分かっているのだと思う。

1日目も2日も“JAM”の前のMCで、来年には新しいアルバムのレコーディングを開始すると言った。それがこのバンドを再集結した「最大のミッション」だという言葉を聞いて、とても嬉しい気持ちになった。同時に新作の制作を「夢」ではなく「使命(ミッション)」という言葉で表すことの意味を考えた。例えばこのライブで“砂の塔”と“BURN”が続けて歌われた時、印象に残ったのは“砂の塔”の方だったというように、再終結後に発表した新曲がライブでも大きな存在感を見せていたことを思うと、新しいアルバムには大きな期待を感じた。
そして、その後に歌われた“JAM”は、強く胸に響いた。聞きながら、2001年1月と2004年12月に同じこの会場で同じ曲を聞いたことを思い出していた。それは苦くせつない経験だったけれど、それさえも今この瞬間につながる必然のように思えた。吉井和哉、そしてザ・イエローモンキーに感謝したいと思った。

2日目のライブの終盤で“SO YOUNG”を歌う吉井和哉の声は何度か上ずっていた。けれど、それは気にならなかった。スクリーンに映る吉井和哉の目に涙が光っているように感じたから。この曲の中では、<あの日僕らが信じたもの/それはまぼろしじゃない>と歌われる。約17年前のあの日信じてはいたけれど実現できなかったもの、そして約17年前のあの日には想像さえできなかった未来が、今回の東京ドームのライブにはあった。
本当に素晴らしいライブだった。

THE YELLOW MONKEYセットリスト(2017/12/09・10)
WELCOME TO MY DOGHOUSE
パール
ロザーナ
嘆くなり我が夜の Fantasy
I Love You Baby(12/09)
TVのシンガー(12/10)
サイキックNo.9
SPARK
天国旅行
真珠色の革命時代〜Pearl Light Of Revolution〜
Stars
SUCK OF LIFE
バラ色の日々
太陽が燃えている
ROCK STAR
MY WINDING ROAD
LOVE LOVE SHOW
プライマル。
ALRIGHT
JAM
SO YOUNG
砂の塔
BURN
悲しきASIAN BOY