THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019-GRATEFUL SPOONFUL-(2019/6/11 横浜アリーナ)

19年ぶりのオリジナルアルバム『9999』と同じく“恋のかけら”で幕を開けたライブは、「30周年」という時の流れを感じさせないというよりも、時の流れを味方につけたバンドだけが醸し出す「円熟」と「新鮮」が同居したライブだった。ロックバンドとして「脂が乗っている」とはこういうことを言うのだろうと思った。

照明やプロジェクションマッピングなど最新の舞台演出のテクノロジーを活かしたライブであったけれど、そうしたテクノロジーの進歩に見合うスケールのライブ(動員、演奏力ともに)をこの2019年にできるということが、イエローモンキーが「選ばれている」と同時に「背負っている」バンドなのだと感じさせた。

ライブ中盤の“Changes Far Away”だったか、吉井和哉は映画『ボヘミアン・ラプソディ』のフレディ・マーキュリーのように腕を振りかざしていた。その瞬間が象徴するように、ライブ中何度も「映画みたいだ」と思う瞬間があった。宝石のように光を反射するステージも、大型スクリーンに映し出されるメンバーの姿も、どの瞬間も映画のワンシーンのようだった。もはやイエローモンキーは存在自体が「映画」で、バンドの演奏以外の演出は不要でさえあるのかもしれないと思った。そう思っても不思議なないくらいその演奏は、歌は、初めてライブで聞く曲も何度もライブで聞いている曲も胸に強く響いてきた。「映画みたいだ」と思うのと同じくらい、何度も涙がこみ上げてきた。

今回のツアーでは、テーマの異なる4種類のセットリストが各ライブにトランプのマークで割り振られていて、この日は「ダイヤ」だった。吉井和哉は「イエローモンキーの中でも宝石のような曲を集めました」と言っていた。その言葉の通り、水面、ガラス、鏡、瞳――といった光を反射してキラキラとした切ない何かを思い浮かべるような曲で構成されたセットリストは、新作『9999』とそれ以外の曲とのバランスが絶妙だった。特に、“天国旅行”から“Changes Far Away”へという死からの再生を彷彿させる流れと、その“Changes Far Away”から間髪入れずに“JAM”へ繋ぐ流れは圧巻だった。『9999』の曲と並ぶことでバンドの代表曲の印象が変わることがとても新鮮だった。と同時に、このことは、『9999』の曲がどれも代表曲に比して遜色のないタフさを秘めていることを感じさせるものだった。

今回のライブでは、吉井和哉のボーカリストとしての存在感と同じくらい、エマ、ヒーセ、アニーの存在感を感じた。「ロックバンド」というものの不思議さを思った。家族のようだけれどどんな人間関係にも喩えられない何かがあり、そこにあるのは友情だとしても友情だけでは続けられない何かがある――その「何か」がロックバンドにしかない美しさや切なさの本質なのかもしれないと思った。そしてその「何か」こそが、吉井和哉が人生を捧げると誓ったものなのだということ。

アッシュがかった茶色の髪とラベンダーのボウタイブラウスの吉井和哉はとても美しかった。そして、とてもいいライブだった。

THE YELLOW MONKEYセットリスト(2019/6/11)
恋のかけら
ロザーナ
熱帯夜
砂の塔
Breaking The Hyde
聖なる海とサンシャイン
Tactics
天国旅行
Changes Far Away
JAM
Ballon Ballon
SPARK
Love Homme
天道虫
バラ色の日々
悲しきASIAN BOY

 

-encore-
Titta Titta
太陽が燃えている
SUCK OF LIFE
I don't know