〈賀茂川 春の日〉という静かな歌い出しに続いて、水面や車窓をスクリーンのようにして「終わった恋」の風景が流れていく。
その端正なメロディと言葉は、抑制が効いているがゆえに溢れる思いを、〈そう思ったんだ/思うんだ〉と断定しているがゆえに断ち切れない思いを感じさせて、切ない。曲が進むにつれてシンプルなバンドサウンドが厚みを増すアレンジが、その切なさを高めている。
「川」「桜」「バス」というモチーフから、1996年にリリースされた"明星"を思い出す。
並んで歩くただそれだけで奇跡のよう思える幸せを歌った"明星"とは対照的に、"柊野別れの恋人"で歌われる恋は過去形であるけれど、そこに込められた感情は"明星"と同じくらいにみずみずしい。だからこの曲は、「恋は終わっても、終わらない」と告げている。
〈髪を結んだ君が 扉の向こうへ〉〈雪の残るポストに春風吹けば〉という、身体と自然の描写に接着させて物語を浮かび上がらせる秀逸なフレーズから、〈時は過ぎていくんだ/時は過ぎ去るんだ〉という後戻りできない現実へのブリッジが、この曲のハイライトだと思う。
見送ることの寂しさと美しさ――b-flowerの新曲とともに、春を迎えることの幸せを感じる。
b-flower 配信シングル「柊野別れの恋人」リリース、歌詞公開|b-flower 八野英史
