b-flower『Live at FEVER』

そして美しく春は訪れる(地の果てより発つ)――春の予感が実感へと移り変わるこの季節に、b-flowerのライブアルバムを手にすることの幸せを感じた。

このアルバムに収められた2022年6月18日新代田FEVERのライブについて、当時私はこんなふうに書いていた。

時間の流れの早さに追い越されるように日々を送りながらも、ずっと昔にb-flowerのライブを渋谷のライブハウスで観た記憶があまり色褪せていないことの不思議を思った。そして今日、約3年半ぶりのb-flowerのライブは「懐かしさ」の入り込む余地のない「みずみずしさ」に貫かれていた。b-flowerは2022年のロックバンドだった。

そして、そのライブアルバムもまた、少し驚くほどに、会場の空気感とともにその「みずみずしさ」を少しも欠けることなく封印していた。同時に、少し意外なほどに、b-flowerというバンドはノスタルジーに寄りかからないのだと気付いた。過ぎ去ったいつかの風景を歌っていても、その切なさも虚しさも美しさも……その全てが「現在形」で浮かび上がる。b-flowerのライブはいつもそんなふうに心の襞を揺らしていく。

“日曜日のミツバチ”を聞くたびに思うことがある。曇り空の下の閉塞感を歌っているはずなのに明るい光を受けて疾走しているように感じるのは錯覚ではなく、このバンドの本質であり大きな魅力なのだということ。そのことをこのアルバム全体を通して実感した。そしてそれは、ライブハウスの暗闇の中で発光するバンドのシルエットを強調したスリーブケースの写真にも通じているような気がした。

最新作の『何もかもが駄目になってしまうまで』の収録曲も含む新旧織り交ぜたセットリストは、どこを切り取っても素晴らしかったけれど、ライブ後半で続けて演奏された“ペニーアーケードの年”~“Bye Bye Canary Bird”~“自由になりたい”~“グライダーと長靴”の4曲が、本当に素晴らしい。イノセントに疾走する八野英史のボーカル、躍動感と一体感のあるバンドの演奏、そしてそれらをドライブする細海魚氏のキーボード。その中で殊更に力を込めて歌われた「僕は打ち負けはしないよ」(Bye Bye Canary Bird)というフレーズーーそれは、この繊細で美しい音楽を梃子に世界に対峙し続けるという、この先もこのバンドが闘い続けていくのだという、マニフェストのように聞こえた。

2025年の3月。美しく訪れる春を感じながら、このアルバムを、b-flowerの音楽を、繰り返し繰り返し聞いている――。

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