YOSHII BUDOKAN 2009(2009/12/28 日本武道館)

素晴らしいライブだった。

これまでの武道館公演で最もフラットなライブの始まりとなった“JUST A LITTLE DAY”。歌い出しこそ少しこもって聞こえたボーカルも、サビに差しかかる頃には、伸びやかに。

ドラムのジョシュ・フリースを再び招いたバンドに見劣りすることのない、ボーカルの力強さ。“LIVING TIME”“LONELY”など『39108』からの曲が多く、「ロックスター」の存在感で魅せきったちょうど3年前の2006年12月28日の武道館公演を思い出す。
あのときは高音でわざと喉をつぶすように歌っていたけれど、きっと今日のように太く安定感のある声で歌いたかったんじゃないか、と思った。リベンジ。


恒例の洋楽をオリジナルの日本語詞で歌うカヴァーは、ビートルズの“Yer Blues”。

死にたい
さびしくて
死にたい
まだ生きてるのと キミに言われたい*1

実も蓋もない救いようのない暗闇を這い回るようなその歌が、どこか透明な美しさを湛える不思議。曲のアウトロからギターをかき鳴らして“ウォーキングマン”へなだれ込む。
曲調のバリエーションの一つとして試しているというよりも、精神性も含めて「ブルースなるもの」に接近している気さえする迫力と説得力。


個人的にはほぼ満点に近い*2セットリストのなかで、一番胸に迫ってきたのは“BEAUTIFUL”。
2006年2月の「MY FOOLISH HEART TOUR」ライブで観たステージ上の吉井和哉があまりに白くて透明で、ライブ後に会ったお友達も同じように感じていて、ふと「死んじゃうんじゃないか・・・」と恐くなった日id:sgfk:20060209のことが頭の中を駆け巡る。
うまく言えないけれど、この曲の祈るような穏やかさは、そんなぎりぎりのところから生まれてきたような、そんな気がする。
だからこそ、この日、ステージに濃い影を落として歌う吉井和哉の姿に、その歌に、感動した。


結局、イエローモンキーの曲は1曲も演奏しなかった。「だから」というのではなく、「そうであってもなくても」吉井和哉がソロアーティストとして、その歌の力だけでステージの上で十全であったという意味で、素晴らしいライブだった。


バンドを解散してソロとなったアーティストに「生まれ変わった」などと言う。
「生まれ変わる」ことは、たとえそれが創作活動上の比喩であったとしても、過去の自分の「死」と表裏一体なのだとしたら、吉井和哉がバンドを経て、ソロアーティストとして充実した二度目の「生」を歩んでいることの重みと凄みに、素直に圧倒された。

吉井和哉セットリスト(2009/12/28)
JUST A LITTLE DAY
ALL BY LOVE
Do The Flipping
LIVING TIME
黄金バッド
Yer Blues(The Beatles カヴァー)
ウォーキングマン
LONELY
CALL ME
FALLIN' FALLIN'
I WANT YOU I NEED YOU
魔法使いジェニー
BLACK COCK'S HORSE
BEAUTIFUL
TALI
ONE DAY
ビルマニア
ノーパン


〜encore〜
BELIEVE
ルビー
WEEKENDER
FINAL COUNTDOWN
Shine and Eternity

*1:原曲の歌詞は<Yes,I'm lonely wanna die/If I ain't dead already/Ooh girl you know the reason why>

*2:ラストが“Shine and Eternity”じゃなくて“トブヨウニ”だったら本当に完璧だった。