「月刊フラカンFEVER 2021 vo.6」フラワーカンパニーズ/友部正人(2021/06/01 新代田LIVE HOUSE FEVER)

フラワーカンパニーズのライブシリーズ「月刊フラカンFEVER」の配信ライブを観た。フラカンと友部さんという、とても嬉しい共演を観ることができた。このライブの少し前に友部さんのブログで数日入院したことが綴られていたので少し心配だったけれど、フラカンのメンバーの拍手に迎えられてステージに登場した友部さんはとても元気そうだった。静かなのに芯のある存在感だったた。「71歳とは思えない若々しさ」ではなく「71歳のみずみずしさ」という言葉を思い浮かべた。そして、友部さんのライブにまつわるいくつかの記憶がみずみずしく思い起こされながら、ライブを味わった。
フラカンと友部さんのセッションのセットリストは以下の通り。

フラワーカンパニーズ×友部正人セットリスト(2021/06/01)
愛について(友部正人
一本道(友部正人
誰も僕の絵を描けないだろう(友部正人
どこへいこうかな(フラワーカンパニーズ
サン・テグジュペリはもういない(友部正人詞・鈴木圭介曲)
虹の雨あがり(フラワーカンパニーズ
人間をはるか遠く離れて(鈴木圭介詞・友部正人曲)

私が圭介さん、友部さんともに初めて生でその歌声を聞いたのは、友部さんの「言葉の森で」というシリーズライブに圭介さんがゲストとして出演した、2007年1月吉祥寺スターパインズカフェのライブだった。ライブ後に振り返ったらライブを観に来ていたマエさんと竹安さんが二人並んで感激した様子で立っていたことや、圭介さんの詩集にサインをもらった時に日付を間違って書かれて「ごめんね」と謝られたこと――そんな一つ一つの瞬間も含めて、14年前のライブはとても印象に残っている。

同じように、久しぶりに共演する圭介さんと友部さんもかつての共演の記憶を手繰り寄せながら、歌っていいるようだった。友部さんが圭介さんにプレゼントしたニューヨークで買ったハーモニカホルダーは遠藤賢司に「5つ買ってきて」と頼まれていたことや、友部さんの函館のライブには毎回「サン・テグジュペリはもういない」(友部さん作詞、圭介さん作曲)だけを聞きにくる家族がいること。二人の会話でさりげなく語られる「人」の存在が、印象的だった。

セッションの1曲目は圭介さんがリクエストした友部さんの「愛について」。聞きたいと思っていたけれど、まさか1曲目で聞けるとは思っていなかったのでとても感激した。そして友部さんのライブで、その曲の存在を全く知らないで初めて「愛について」を聞いたときのことを思い出した。

それは、2009年6月19日の渋谷アピアでのライブだった。初めて聞いた曲のその途中で「こんな曲があるんだ…」と言葉にならない衝撃を受けたのは、後にも先にも友部さんの「愛について」だけだと思う。そして、この14年前のライブではもう1つ忘れがたいことがあった。当日開演ぎりぎりで会場に着いたら席は全て埋まっていて、一番後ろの壁際に立ったら、そばの丸椅子に座っていた痩せた男性が「どうぞ」と席を譲ってくれた。その譲ってくれた人は遠藤ミチロウだった――。

フラカンのメンバーも加わってからの曲では「どこへいこうかな」が良かった。友部さんが「圭介んくんの歌はキイが高い」と以前言っていた通り、友部さんの曲で聞かないような高音を歌う友部さんも、フラカンのメンバーもとても楽しそうだった。
そして、ライブ中、「時折り」よりもずっとずっと多く友部さんを見つめる圭介さんの眼差しがとても印象的だった。「尊敬」というより「私淑」という言葉の方がしっくりくるようなそんな眼差しだった。

フラカンも友部さんも、ライブを観るのは久しぶりだった。そして、今度はライブハウスで観たいと思った。ライブハウスで観ることは知らず知らずのうちに、忘れがたい「記憶」を手にしているのだと改めて気付いたから。それはちょうど、ライブ翌日の友部さんの日記には書いてあったこの言葉に通じているように思う。 

誰と一緒にやっても別れがたい気持ちになるのはライブの基本が常に生身だからこそ。

ライブという表現形態をこれからも大切にしたいです。
(「友部正人より2021」【6月1日(火)「月刊フラカン」】)

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