ザ・クロマニヨンズ「MUD SHAKES 2021」(2021/02/20)

新作『MUD SHAKES』を引っ提げた「初日で、もしかしたら最終日かもしれない」ライブを配信で見た。昨年12月のアルバムリリース直後の全曲配信ライブはスタジオ(おそらく録画)ライブだったけれど、今回は東京ガーデンシアターでのライブのリアルタイム配信で、いつもの「クレイジー・ロックンロール・ピーポー」へのアナウンスに呼び込まれてメンバーが登場した瞬間、本当に嬉しかった。

新作を曲順通りに(途中に既発曲を挟みながら)演奏するセットリストの1曲目は、‟VIVA! 自由”。コロナ禍の収容人数制限、観客のマスク着用、大声の発声・声援の禁止等のさまざまな「不自由」とは裏腹に、ザ・クロマニヨンズはいつも通りに「自由」だった。ライブ前からメンバーを呼び声や歓声が絶えないこれまでのライブとの違いよりもむしろ、制限や制約があっても変化しないザ・クロマニヨンズのライブの強さを感じた。バンドも観客も皆「心が自由」なのだと思った。

そして、ヒロトはいつにもましてニコニコしていた。「皆さんは全てのノルマを果たしてここに来たんだから、楽しんでいってくれよな」と、満面の笑顔でヒロトは言っていた。

新作の中でライブで聞くことを最も楽しみにしていた‟浅葱色”が本当に良かった。アルバムジャケットと同じデザインのバックドロップが浅葱色の照明に染まる中でヒロトはこう歌う。

痛みを 無限に 受け止めて行く
無傷のまま 死にたくない 浅葱色

この曲を聞くと、2019年12月に逝去したイノマーさんを思い出す。歌詞の中の「水平線」からザ・ブルーハーツの“ナビゲーター”も思い出す。色に投影された死生観が研ぎ澄まされた詩情とメロディに乗ってロックンロールに化身するという「奇跡」。クロマニヨンズのライブには、そんな「奇跡」がいくつもいくつも散らばっている。

会場で観たら、きっともっと感激したのだろうと思う。けれど、複数のカメラで捉えた映像とそのスイッチングが演奏にぴったりと合っていて、十分の臨場感だった。ハープを吹くヒロトの背中や、ステージから身を乗り出して観客に目線を合わせるマーシーの横顔をしっかりと見ることができるのは、配信の良さだと思った。

そして、この日はマーシーの59回目の誕生日だった(おめでとう!)。全曲演奏し終わって、ステージからの去り際、何度もマーシーに両手を捧げるヒロトの笑顔が印象的だった。
いいライブだった。

ザ・クロマニヨンズセットリスト(2020/02/20 東京ガーデンシアター)
VIVA! 自由!!
暴動チャイル(BO CHILE)
浅葱色
新オオカミロック
カーセイダーZ
ドンパンロック
クレーンゲーム
生きる
ペテン師ロック
妖怪山エレキ
メタリックサマー
空き家
新人
ふみきりうどん
東京ブキズキ
エルビス(仮)
どん底
突撃ロック
タリホー
かまわないでくださいブルース
エイトビート
ギリギリガガンガン
ナンバーワン野郎