another sunny day 2018(b-flower/The Laundries/For Tracy Hyde/DJ:明山真吾)(2018/10/13 KOENJI HIGH)

20年以上の時を経てb-flowerのライブを観ているということ以上に、そのライブに「20年」という時間やその間の空白を感じないことが驚きだった。b-flowerの音楽は、その演奏は「みずみずしい棘」のままだった。かつてとキーの高さの変わらない八野英史のボーカルは、今もなお「告発(プロテスト)の美しさ」を滲ませていた。

セットリストが良かった。ライブ冒頭の「お久しぶりです」と「はじめまして」の挨拶のような奥ゆかしさが、3曲目の“始まる、もしくはそこで終わる”を境に脱ぎ捨てられて、感傷でも感慨でもなく、b-flowerの言葉とメロディそれ自体に感動する瞬間が何度もあった。それは、b-flowerが2018年の「今」のバンドなのだと確認する瞬間でもあった。

八野英史はいくつかの曲の前に、曲を作った当時の問題意識や歌に込めた思いを語っていた。“臨海ニュータウン”について「人間と自然」というような大きなテーマについて考えていたことを語ったそのすぐ後で、「ネオアコのくせに(苦笑)」と自嘲して言い放ったその言葉がとても印象的だった。
あれだけの美しい言葉とメロディを紡ぐ才能を持ちながらも、八野英史は「自分の才能に酔う」ということがあまりないアーティストなのかもしれないと思った。ふと、「詩人は哲学者ほどにも言葉を信用しない」という昔どこかで読んだ一節を思い出した。
時に、この種の表現者が抱える「厳しさ」は表現することのブレーキになるのかもしれない。けれど、ライブ終盤で披露された新しい2曲“自由になりたい”や“SPARKLE”の開放感からは、むしろ今のb-flowerがバンドとしてアクセルを踏んでいることが伝わってきた。前に進もうという意志というか、覚悟のようなものさえ感じた。

そして、本編最後に演奏されたのは“君がいなくなると淋しくなるよ”ーー私がb-flowerの曲の中で一番好きな曲のひとつ。この曲をライブで聞けたこと自体が感動であったけれど、その演奏の素晴らしさがそれ以上に感動的だった。繊細が力強さを携え、力強さが繊細を宿した演奏はそれ自体がひとつの世界観でありひとつの価値のようだった。曲の終わりに向けて文字通り躍動しながらギターをかき鳴らす横顔はとても眩しく、美しかった。

ギターボーカルがハンドマイクで歌うとそれだけでどきどきする…という自分の個人的な性癖(的な何か)を差し引いても素晴らしかった“日曜日のミツバチ”や、全バンドでセッションしたまさに<清らかで激し>かった“天使のチェインソー”も含め、アンコールもとても良かった。
“永遠の59秒”で<これから時を 日々の暮らしを/笑って行ければいいね>と歌った八野英史の表情は、おそらく今回のライブ中で最も高音域を歌うという以上の熱さを帯びていて、胸が熱くなった。
とてもいいライブだった。

b-flowerセットリスト(2018/10/13)

つまらない大人になってしまった
始まる、もしくはそこで終わる
ペニーアーケードの年
North Marine Drive
冷蔵庫に捨てる
臨海ニュータウン
地の果てより発つ
自由になりたい(新曲)
SPARKLE(新曲)
君がいなくなると淋しくなるよ


―encore―
日曜日のミツバチ
永遠の59秒
天使のチェインソー(with The Laundries ,For Tracy Hyde)