ザ・クロマニヨンズツアー2013 イエティ 対 クロマニヨン(2013/06/06 SHIBUYA AX)

ヒロトは、ステージに登場して歌い始めた瞬間からステージを去るまで、ずっとキラキラして見えた。「ロックンロールの輝き」を反射し続けていた。

グリセリーンクイーンの前のMCで、ヒロトは満面の笑顔を浮かべてこう言った。「こんな時間がずっと続けばいいのにって思う。楽しいなあ。ちっとも…死にたいなんてちっとも思わないけど、死んでもいいって思う。もっともっと楽しもう」。死んでもいいって思えるほど楽しい瞬間や心の底から好きなものがあれば生きていられるのだとしたら、私はとても幸運で幸福だと思った。ステージの上のヒロトマーシーは、その同じ幸運と幸福の真っ只中を疾走していた。

そして、アンコールの“南から来たジョニー”。“団地の子供”もうそうだったけれど、ミディアムテンポの曲は、ヒロトの今の声量がどれほどすごいかを教えてくれる。その声で歌ったこの曲は、今回も出色だった。

粉になった夏が スカイツリーに降る
南から来たジョニー
ピカピカのブーツで


思い出なんてない すべて捨ててきた
南から来たジョニー
揺れるは赤い薔薇

前作『ACE ROCKER』の“シャイニング”と同じく、改めてマーシーの詩才に圧倒される。言葉で何かを語ろうとするのではなく、言葉と言葉の間から言葉にならない感情が、風景が、物語が立ち上がる。<ピカピカのブーツ>というフレーズは、彼はどこに古いブーツを置いてきたのだろうという問いを、<思い出なんてない>というフレーズは、彼の思い出には何が詰まっていたのだろうという問いを喚起する。明かされることのない彼の正体を解くヒントのように歌われる言葉は、どこか喪失と挫折の影を帯びている。ヒロトのハープは、歌詞それ自体が決して告白しない感情を代弁するかのように、せつなさを爆発させていた。

このライブの数日前にとても悲しい事があった。だから、ライブの間ずっと涙が止まらなかった。私のそばに居た人はきっと「こいつ、どんだけ感動してんだ?!」とひいていたかもしれない。けれど、それも間違ってはいなかった。ライブの間中、私は心の底から感動していたから。
いいライブだった。本当にいいライブだった。この日のライブのこと、ライブを観ながら頭の中を駆けめぐったことを私はずっと忘れないと思う。

ザ・クロマニヨンズセットリスト(2013/06/06)
突撃ロック
黄金時代
人間マッハ
涙の俺1号
チェリーとラバーソール
欲望ジャック
ゴーゲバゴー
他には何も
団地の子供
ホッテンダー
恋に落ちたら
とがってる
日本の夏ロックンロール

ヘッドバンガー
グリセリンクイーン
底なしブルー
鉄カブト
タリホー
紙飛行機
ナンバーワン野郎!


−encore−
南から来たジョニー
雷雨決行
燃えあがる情熱