The Rolling Stones 「14 ON FIRE JAPAN TOUR」(2014/03/06 東京ドーム)

丸ノ内線後楽園駅のホームを降りた瞬間に、わくわくしてきた。黒っぽい冬の服を着た人たちも皆そんなふうに見えた。みんなそわそわと心躍らせていた。ローリング・ストーンズは人を無邪気にさせる。

何といってもミック・ジャガーのステージング。圧巻だった。大型スクリーンが映し出す「巨人」のようなミック・ジャガーに目が奪われつつも、ステージを縦横に駆け抜け動き続ける生身のミック・ジャガーの存在感が凄かった。その豆粒ほどの大きさの身体は、5万人が埋め尽くす空間の興奮をしっかりと掌握していた。けれど、その身体はとても軽やかでもあって、ステージからアリーナに伸びた花道をスキップしながら戻る姿がとても印象的だった。

…というふうに、どうしてもミック・ジャガーについて語らないわけにはいかないけれど、同時にストーンズはあくまで「バンド」であるところが凄いと思った。客席よりもドラムセットやロン・ウッドに体を向けて、ギターを弾くキース・リチャーズの姿がその象徴のような感じがした。ソロパートで照れくさそうにMCをするその表情は、「ロックスター」という以上に「バンドマン」の佇まいだった。

個人的嬉しかったのは日替わりで演奏されたバラードの“Ruby Tuesday”*1清志郎がカヴァーしていたことを思い出した。清志郎のカヴァーは原曲に忠実だったんだなと気づいた。清志郎がいなくなってもうすぐ5年にもなるというのに、今目の前でローリング・ストーンズが演奏しているということがとても不思議で、とても感慨深かった。

私が観たローリング・ストーンズはとても無邪気で軽やかだった。それは、このバンドがロックンロールの歴史に挑戦する必要がないからなのかもしれない。バンド自身が歴史そのものとなってしまったのだから。その意味で、ローリング・ストーンズがいなくなってしまったら、ロックンロールの歴史は終わるのかもしれない。けれど、それはロックンロールにとって幸福で、潔いことのようにも思う。

ローリング・ストーンズのライブを観ることができて、良かった。

The Rolling Stones セットリスト(2014/03/06)
Jumpin’ Jack Flash
You Got Me Rocking
It's Only Rock'N'Roll(But I Like It)
Tumbling Dice
Ruby Tuesday
Doom And Gloom
Respectable (with Tomoyasu Hotei)
Honky Tonk Women
Band Introductions
Slipping Away (with Keith on lead vocals and Mick Taylor joining on guitar)
Before They Make Me Run (with Keith on lead vocals)
Midnight Rambler (with Mick Taylor)
Miss You
Paint It Black
Gimme Shelter
Start Me Up
Sympathy For The Devil
Brown Sugar


―encore―
You Can’t Always Get What You Want
(I Can't Get No)Satisfaction (with Mick Taylor)

*1:この曲が始まってすぐに、キースリチャーズがギターを弾きながらステージ袖にせわしなく何か指示していて、しばらくしてコーラス用のマイクが運ばれてきたのが印象的だった。