SPITZ JAMBOREE TOUR 2013-2014“小さな生き物”(2014/1/30 NHKホール)

会場に入って、奥行の深いNHKホールのステージに『小さな生き物』のジャケットのグライダーを髣髴とさせる大きなセットが浮かんでいるのを見て、「ホールらしい」と思った。そして、スピッツホールで観るのは久しぶりだと思った。同時に、それはスピッツのワンマンライブを観るのはとても久しぶりでもあることだと気づいて、少し感慨深かった。
私が最後に観たスピッツのワンマンライブは2002年12月の青森市民会館で、その前に観たワンマンライブは1994年11月の渋谷公会堂だった。好きなアーティストやバンドのワンマンライブはツアー毎にに必ず行き、1年に何度も観る。なのに、なぜかスピッツはインターバルがとても空いてしまう。でも、それが私のスピッツとの“適切な距離”なのだと思う。きっと私は「スピッツは好きになりすぎると辛くなるバンドだ」と心の奥で警戒していのるのだと思う。その可愛い佇まいに呑み込まれることへの畏れ、その「永遠の変わらなさ」に対する妬ましさ――スピッツはそんな曰くい難い感情をもてあましそうになる厄介なバンドだという気がする。そして、そんなバンドは他にはいないという意味で、スピッツはどこか「怪物」的だ。


会場が暗くなって、スーっとメンバーが登場して始まった1曲目は“小さな生き物”。<負けないよ 僕は生き物で 守りたい生き物を>と歌うその声は、歌詞の力強さゆえにどこか儚げにホールに響いた。
新作『小さな生き物』の曲を中心に、27年のキャリアを縦横無尽に行き交うセットリストは「マスターピース(傑作)の行進」といった趣きで、静かに圧倒される。前半の“名前をつけてやる”、中盤の“ロビンソン”、後半の“君が思い出になる前に”“うめぼし”といった90年代前半の曲が、新作の曲と前後して演奏されても全く違和感なく「スピッツの音楽」という1点に収斂していくということ――スピッツの世界には時間が流れていないのかもしれない、と感じた。

俺らが最も輝いていた頃の曲です(笑)」と自嘲的なMCに続いて歌われた“ロビンソン”。バンドの代表曲であり90年代邦楽の名曲であるこの曲を歌う草野マサムネの声は今もなお微妙な震えを帯びていた。スピッツの名曲には、贅肉も筋肉もつかないのだと思った。
27年のキャリアを経てもなお色褪せないどころか、むしろ強固にさえなっているこの「スピッツらしさ」という大きな謎。考えても考えても、きっとその謎はとけない気がする。だとしたら、その謎を解く鍵はたったひとつ、こんなふうに考えることしかないと思った――「スピッツは最初から完成していた」、「スピッツは最初から完結していた」、と。*1

そう思ったら、最初から完成し完結していたこのバンドに唯一残されていた余白がライブだったのかもしれないと思った。「CDの素晴らしさにライブが追いつかない」とファンをやきもきさせた季節、「スピッツのライブはCDを聞いているような凄さ」とファンを驚かせた季節を通り過ぎて、このライブの演奏は「CDよりもみずみずしく、力強い」と感じさせるものだった。特に“未来コオロギ”と“りありてぃ”はCDで聞くのとは印象が変わるほどの迫力だった。
ライブにおける「完璧」すらも手に入れたように思えるバンドには、安定感を超えた「無敵感」というようなものさえ感じた。それが力んだ感じではなく肩の力の抜けた感じであるところがまたスピッツの凄いところだと思った。


おそらく、私にとってのスピッツはこのままずっと「縮まらない距離」のままであると思う。おかしな言い方だけれど「スピッツには敵わない」とますます感じるから。だからこの「距離」をいつまでも大切にしてスピッツの音楽を聞き続けたいと思う。

スピッツセットリスト(2014/1/30 NHKホール)
小さな生き物
けもの道
三日月ロック その3
潮騒ちゃん
名前をつけてやる
スピカ
オパビニア
ロビンソン
ランプ
さらさら
恋は夕暮れ
エンドロールには早すぎる
りありてぃ
君が思い出になる前に
うめぼし
未来コオロギ
僕はきっと旅に出る
野生のポルカ
8823
エスカルゴ
運命の人


−encore−
スパイダー
チェリー
君は太陽

Thanxx for Dj-san.

*1:だから、ライブのMCで、今年の夏のアリーナツアーで初めて武道館でライブをすることの理由(言い訳w)として、結成当時のロックシーンにあったバンドのサクセスストーリー(新宿ロフト・渋谷Lamama→日本青年館NHKホール→武道館)に沿うことの抵抗感を語っていたのは興味深かった。バンド結成当初の目標は新宿ロフトでのライブで、それはかなり早い段階で達成してしまったとも。