ザ・クロマニヨンズツアー レインボーサンダー2018-2019(2019/02/23 千葉市民会館)

とてもとても、本当に本当に、いいライブだった。

新作『レインボーサンダー』は、そのタイトルが意味するように、CDで聞いた印象の何倍も曲調がカラフルだった。そしてソングライターとしてもプレイヤーとしても、それを誇示するというよりはバンドとして楽しみながらあっさり実現できてしまっているところがただただ凄いと思った。“ミシシッピ”に“ファズトーン”、“モノレール”とギターが印象的な曲が多い新作の中、“サンダーボルト”が深く心に突き刺さった。

サンダーボルト 呼んでみたけど
名前のように 呼んでみるけど
サンダーボルト 稲妻でした
二度と会えない 稲妻でした


突き抜けていく 突き抜けていく
突き抜けたきり もう それきり

ロックンロールに出会ったという奇跡――思えば、もう何曲も何曲も、ヒロトはそのことを歌い続け、問い続けている。自分の人生に起きた奇跡について考え続け、そして辿り着いた答えが、<二度と会えない 稲妻でした><突き抜けたきり もう それきり>と、過ぎ去ったものを見送るような過去形で歌われているところに、何とも言えない、切なさを通り越してこみ上げてくる何かがあった。マーシーのギターソロは、そんな言葉にならない気持ちに寄り添うように優しかった。この曲を歌いながらヒロトは、満面の笑みを浮かべながら泣いていて、感極まって涙を浮かべながら笑っていた。歌い終わって拭った目元に光っていたのは汗だけではなかった。

ロックンロールに出会い、人生を変えられた人間は数え切れないほどいる。この日会場を埋め尽くしたファンも皆そうなのだといえる。けれど、そのことを「奇跡」と感じ、その意味を純粋に問い続けている人間は、ほとんどいないのだということ。多くのロックミュージシャンとヒロトを分かつ分水嶺があるとしたら、「ロックという奇跡」に降伏するかどうかということなのかもしれない。「ロックという奇跡」に半ば降伏するということは、ただそれに圧倒され、見送るしかないのだということ。
サンダーボルトを歌っている時、マイクを握り締めた右手とは対照的に、床に向いたヒロトの左手は蛸の足がうごめくように動き続けていた。何かを掴もうと必死であがき続けているような、その左手は、何かとても象徴的な気がした。“生きる”の<いつか どこか わからないけど/なにかを好きになるかもしれない/その時まで 空っぽでもいいよ>というフレーズがシンクロするような気がした。ヒロトは何も掴んでいなかった。徒手空拳だった。

新作『レインボーサンダー』の曲以外には、“グリセリン・クイーン”“エイトビート”“エルビス(仮)”そして“タリホー”と、完璧なセットリストだった。
ライブ後、<二度と会えない 稲妻でした><突き抜けたきり もう それきり>というフレーズは、まさにクロマニヨンズそのものであるような気がした。でもそれを言葉にすると切なさに押しつぶされそうになるから、ファンは皆「最高!」「最高!」と繰り返すばかりなのかもしれない。
だから、クロマニヨンズは最高すぎて、とても切ない。

ザ・クロマニヨンズセットリスト(2019/2/23)
おやつ
生きる
人間ランド
ミシシッピ
ファズトーン
サンダーボルト
グリセリン・クイーン

エイトビート
時のまにまに
恋のハイパーメタモルフォーゼ
荒海の男
東京フリーザ
三年寝た
ペテン師ロック
エルビス(仮)
雷雨決行
ギリギリガガンガン
GIGS(宇宙で一番スゲェ夜)


―encore―
突撃ロック
タリホー
ナンバーワン野郎!

レインボーサンダー(特典なし)

レインボーサンダー(特典なし)