THE YELLOW MONKEY 『Live Loud』

 ザ・イエローモンキー約20年ぶりのライブアルバム『Live Loud』。
2019年から2020年にかけて行われたドームツアー(名古屋ドーム、京セラドーム、東京ドーム)で演奏された全48曲79テイクからファン投票をもとに選ばれた楽曲で構成されたこのアルバムは、ファン一人一人の「思い出」とバンドとバンドを取り巻く状況の「記録」とが交錯して忘れ難い「記憶」を立ち上げてくる。

ファン投票から選ばれた収録曲は、通常版となるDisc1の15曲中13曲がシングルもしくはデジタル配信でリリースされた曲で、15曲中10曲がファン投票によるベストアルバム『イエモン―FAN'S BEST SELECTION―』(2013)を再集結後に新たに録音した『THE YELOOW MONKYE IS HERE』(2017)の収録曲に重なっている。
これらバンドの「王道」曲が、バンド再集結の最初に発表された“ALRIGHT”で始まって(間奏でメンバー紹介するこの曲が1曲目でとてもいい)、再集結後の「シーズン2」を締めくくる“未来はみないで”で閉じられる曲順に、このアルバムが30周年ドームツアーとともに、再集結後の5年間を総括するものでもあるのだと感じた。

私が『Live Loud』のファン投票(3曲まで)で投票したのは、“Father”と“シルクスカーフに帽子のマダム”(ともに名古屋ドーム)と“真珠色の革命時代”(東京ドーム)だった。“Father”と“真珠色の革命時代”が初回限定版のDisc2に収録されて嬉しかったと同時に、ふと「Dics2的なファン」というワードが頭に浮かんだ。けれど、イエローモンキーの場合は「Disc2的なファン」あるいは「(幻の)Dics3的なファン」の思入れもまた強い。そうしたファンの思いを十分理解しながらも、衒うことなくDics1的な「イエローモンキー」の王道を標した率直さがこのアルバムの良さなのだと思う。ライブで曲の終わりに響くファンの歓声や拍手は短めにフェイドアウトさせて曲をつないでいく潔さも、15曲というボリュームを感じさせずにアルバム全体を聞きやすいものにしていると思った。

改めてライブアルバムとして聞くと、「シーズン2」のイエローモンキーはどの曲もオリジナルのアレンジ通りに演奏していたのだと気付く。そして、それをバンド史上最大規模のライブで、バンド4人とキーボードという最小限の編成で演奏していたのだと。全くの私見だけれど、それこそが「シーズン2」のイエローモンキーが目指したことであり、成し遂げたことなのかもしれないと思った。「シーズン1」(1989~2004)でやり残したことの補完とロックバンドとしてのスケールアップ。生真面目なほどに、完璧を超えるほどに、イエローモンキーが「ザ・イエローモンキー」であろうとしていた――そんなことをふと思った。

そして、新型コロナウイルス感染症による一連の自粛後初の大規模会場での有観客ライブとなった2020年11月30日の東京ドームでの、“バラ色の日々”と“JAM”。名古屋ドーム、京セラドームでも演奏された2曲ではあるけれど、やはり東京ドームでの演奏を収録することに意味があったのだと思う。2019年12月から2020年11月にかけて、まさに「コロナ禍」の渦中で「コロナ禍」と並走した日本のロックンロールの記録として、この2曲は一バンドのライブの記録に留まらない重みがある。

“バラ色の日々”と“JAM”で会場に響いた「Sing Loud」の歌声(予め録音されたファンの歌声)は、あの日会場で聞いた時よりも何倍も胸に響いてくるものだった。“JAM”のイントロのハイハットが鳴った瞬間に湧き上がる歓声を浴びることなく歌い出された“JAM”での吉井和哉の祈るような声と泣き顔を思い出して、「感動」という言葉ではうまく表し得ない感情が再び蘇ってきた。

もし、これからイエローモンキーを聞きたいという人がいたならば、私はこのアルバムから聞き始めることを勧めると思う。それはこのアルバムが「入門編」にふさわしいからではない。このアルバムがひとつの「美しいロックンロールの完成形」だからだ。

THE YELLOW MONKEY『Live Loud』Disc1 収録曲

1. ALRIGHT -Nagoya Dome, 2019.12.28

2. SPARK -Nagoya Dome, 2019.12.28

3. 太陽が燃えている -kyocera Dome, 2020.2.11

4. 砂の塔 -kyocera Dome, 2020.2.11

5. 追憶のマーメイド -Nagoya Dome, 2019.12.28

6. 楽園 -kyocera Dome, 2020.2.11

7. パール -Tokyo Dome, 2020.11.3

8. 天道虫 -kyocera Dome, 2020.2.11

9. BURN -Nagoya Dome, 2019.12.28

10. LOVE LOVE SHOW -Nagoya Dome, 2019.12.28

11. バラ色の日々 -Tokyo Dome, 2020.11.3

12. SUCK OF LIFE -Nagoya Dome, 2019.12.28

13. JAM -Tokyo Dome, 2020.11.3

14. プライマル。 -Tokyo Dome, 2020.11.3

15. 未来はみないで -Tokyo Dome, 2020.11.3

 追記:ファン投票で、あともう1曲投票できたとしたら“I don't know”(名古屋ドーム)を投票したかった。この曲がDisc1の終盤に収録されていたら、このアルバムの表情は少し違ったものになったかもしれないと思う。 

Live Loud (初回盤)

Live Loud (初回盤)