ザ・クロマニヨンズ ツアー PUNCH 2019-2020 (2020/02/19 千葉市民文化会館)

通算13枚目のオリジナルアルバム『PUNCH』を引っ提げての全58本に及ぶ全国ツアーのホールライブ初日。新作でヒロトが<アア ヤヨイ マヂカ リリィ>(リリィ)と歌う声が頭の中で再生されて、まさに今の季節にぴったりだと思いながら、会場に向かった。
ライブ前のサウンドチェックの時点で、ドラムの音もベースの音もギターの音も、とにかく重くて鋭い。つまり、かっこいい。

『PUNCH』と同様にライブの1曲目は“会ってすぐ全部”。サビで歌われる<ブルースをかきわけて パンクロックが行く>というフレーズ通りの疾走感の一方で、かきわけたはずのブルースもまた顔をのぞかせる感触が新作のアルバムの作風に重なった。
ライブ中は駆け抜けるロックンロールのカッコよさに圧倒されていたけれど、ライブが終わってみると、ホールならではの演出も相まって、ミディアムテンポの曲の余韻が後を引いていた。特にマーシー作の“小麦粉の加工”や“整理された箱”、“長い赤信号”は、日目に留まることさえないような日常の風景を繊細な言葉と爆音のギターで忘れがたい光景のように切り取っていた。

小麦粉の加工所から水蒸気
季節の恐竜が首をもたげる
(小麦粉の加工)

こぼれ落ちるレモネード
痩せた駱駝の背中に
英雄のほほえみ
(長い赤信号)

言葉だけなぞれば、それはビートニクスの詩のようでもあり自由律俳句のようでもあり、さらには作者不明の童謡のようでもあるけれど、爆音のステージから聞こえてくるのは紛れもないロックンロールだった。


2月27日、クロマニヨンズの公式ウェブサイトで、「2月26日新型コロナウィルス感染症対策本部より政府に要請された方針に基づき」として、5公演の延期が発表された。
ふと、前作の『Rainbow Thinder』の“サンダーボルト”を彷彿とさせる、ヒロトが一つ一つの言葉を噛みしめるように歌った“リリィ”で、<春はまた やってくる 同じ顔をした 別の春>と歌っていたことを、思い出した。同時に、先行シングルの“クレーンゲーム”の<やる事やるだけ 生活のドアホ>という日常を抱きしめつつ蹴飛ばす勇ましさも思い出した。

今年の春はどんな春になるのだろうかと考えながら、クロマニヨンズの「変わり続ける変わらなさ」に、今年もまた会えたことに感謝したいと思った。

 ザ・クロマニヨンズセットリスト(2020/02/19)
会ってすぐ全部
怪鳥ディセンバー
ケセケセ
デイジー
ビッグチャンス
小麦粉の加工
あったかい
底なしブルー
クレーンゲーム
ガス人間
整理された箱
リリィ
長い赤信号
単ニと七味
生きる
どん底
雷雨決行
ギリギリガガンガン
ナンバーワン野郎!
ロケッティア

 

―encore―
突撃ロック
ギリギリガガンガン
クロマニヨン・ストンプ