フラワーカンパニーズ「フラカン28号SPECIAL」(2017/04/22 日比谷野外大音楽堂)

フラカン野音」というと思い出すのは、48年ぶりの大寒波(!)に襲われた4年前の野音でのライブid:ay8b20130428。本当に寒かった…、でもとても印象深いライブだった。そして、ライブが始まる直前になって強く雨が降り出した今回のライブも印象深いライブになった。雨が降ったから、というだけではない。いい歌をたくさん聞くことができたから。

雨脚が強まる状況を逆手にとるかのように‟真冬の盆踊り”で始まったセットリストが、とても良かった。「2015年12月の武道館ライブで演奏されなかったフラカン名曲集」という感じがした。
中盤の‟日々のあぶく”と‟靴下”*1――虚しさ、寂しさ、侘しさ、そんなどうにもならない、歌にさえなりそうもない気持ちを歌にするということ。何がどうなるわけでもないけれど、でも、そんな気持ちこそが「自分」というものが存在することのささやかな証拠なのだとしら、それを見捨てないことにも意味はあるのかもしれない…とか、そんなことを考えた。‟靴下”での竹安さんのギターソロが素晴らしかった(長くないよ…竹安)。

そして、イントロが始まった瞬間に「うわぁ」と心の底から嬉しさと涙がこみ上げてきた‟口笛放浪記”。フラカンのライブに行くようになってもう10年以上になるけれど、ライブで聞くのはおそらくこれが2回目。私がフラカンの中で一番好きな曲の一つ。雨が降っていることも気にならないぐらい、むしろ雨の中でこの曲を聞いたことが感動に拍車をかけたと思えるぐらい、本当に良かった。

失くしたものだけ覚えてる 足りないものだけ数えてる
さびしい自分に立ち止まり むくんだ手足を温めてる

終電車を見送って 素足で夢を歩いている
いけどもいけどもきりはなく 今いる場所さえわからない

そんな‟口笛放浪記”の感動に匹敵するほどだったのが、アンコールの1曲目で披露された新曲の‟ハイエース”。初め聞いたけれど、1度聞いただけで、曲が終わる前に「名曲」だということがわかるほどいい曲だった。曲名の通り、‟深夜高速”の続編でもありアンサーソングでもあった。けれど、そこにはハッピーエンドも答えもなくて、むしろ、それらがないということを引き受けながらも、走り続けるということを歌った歌だった。言葉も曲(メロディと展開)もアレンジもすべてがバッチリとハマっていた。うまく説明できないけれど、この歌があることで、フラカンもそのファンも「これから先」を続けていくことができるんだろうと思えた。バンドとファンにとって心臓でもあり背骨でもあるような曲がまた一つ増えた。そして、今年リリースされるという次のアルバムはきっといいアルバムになると思った。

結局、雨は止まなかった。でも、会場を出て、日比谷公園の建物の軒先や地下鉄の駅でレインコートを脱いだりしているファンはみんな笑顔だった。それがこの日のライブがいいライブだったことを物語っていた。
雨が降らないライブの方が良いけれど、でも雨のライブもなかなか捨てたもんじゃない――この「ライブ」を「人生」に置き換えてみる。フラカンが歌っているのも、こういうことなんじゃないかと思った。だから、フラカンの歌は優しく、強いのだと思う。

次回、2年後の野音は晴れますように(笑)。

真冬の盆踊り
脳内百景
三十三年寝太郎BOP
Mr.LOVE DOG
チェスト
夜空の太陽
すべての若さなき野郎ども
感じてくれ
口笛放浪記
あまくない
日々のあぶく
靴下
大人の子守唄
虹の雨あがり
最後にゃなんとかなるだろう
ホップ ステップ ヤング
終わらないツアー
消えぞこない


―encore1―
ハイエース(新曲)
とどめをハデにくれ(Theピーズカヴァー)
TEEN AGE DREAM


―encore2―
東京タワー
ロックンロール

*1:かつてスピッツと対バンした時に、草野マサムネが‟靴下”が好きだと言ったら、「‟ロビンソン”と交換してください!」と言って両バンドのファンを凍りつかせた圭介さんを思い出す。