友部正人「ミディの時代―友部正人1989−2008」発売記念ライブ(2015/12/06 Star Pine's Cafe)

ライブ本編とアンコールの終わりでの「ありがとうございました」という友部さんの声の力強さが、ライブの充実を率直に表していた。いいライブだった。

『ミディの時代』というタイトルそのままに、1989年から2008年までの約20年間に友部さんがミディからリリースした作品のベスト盤の発売記念ライブ。「みんなあんまりミディの時代のCDを聞いてくれていない気がして、聞いてほしいと思って作りました。DVDもつけてこれでもかって(笑)」と自嘲気味に話す友部さんの言葉に、「ミディの時代」に対する友部さんの深く、そして静かに強い愛情を感じた。
「ミディの時代」から共演してきたミュージシャン達を招いての演奏は、その愛情が楽曲に対してというよりも、それらを生み出したさまざまな繋がりや風景も含めた「その時代」まるごとに対してのものなのだと感じさせるものだった。曲の合間に、ゲストミュージシャンの武川雅寛さん(バイオリン、トランペット、マンドリン)が病気から快復したことや、ミディの時代も含めて長年友部さんの音楽に携わってきたエンジニアの吉野金次さんが今日のライブを観に来てくれたことを話す友部さんの様子から、さらにそのことを実感した。

友部さんの曲は40年前の曲でも新しい曲でも、歌えば今の歌になってしまう。友部さんのライブでは「歌は時間を超えるということ」を何度も感じてきた。けれど、「ミディの時代」という過去を名づけた今回のライブでは「時間が歌を温めるということ」を感じた。それはちょうど、ライブの後半、いつかの鎌倉芸術館でのレコーディングに触れて、ふと思い出したように友部さんが話した「吉野さんがモニターを使わないでやろうって言ったので…」「吉野さんは会場のピアノの調律をしなかったんです」というエピソードが、断片的な事実を述べているだけなのに何かとても大切な思い出を語っているようだったように――。この日の友部さんの歌とゲストミュージシャン達との演奏は「現在よりもみずみずしい過去」というものの存在を体現していた。

『ミディの時代』に収録された曲をほぼ網羅した今回のライブで、新たに好きになった曲が何曲もあった。知っていたけれど改めてその良さに気付いた曲も何曲もあった。特に、バンド編成での“僕等は同時に存在している”“朝は詩人”、ドラムと友部さんの弾き語りのみの“銀の汽笛”がとても良かった。ドラムが加わると、友部さんの歌はより一層輪郭が濃く鋭くなって、本当にかっこよかった。

友部正人セットリスト(2015/12/06)
−第1部−
眠り姫
働く人(w/安藤健二郎)
星の庭
ジャージー・ガール(w/リクオ
愛はぼくのとっておきの色
ニレはELM(w/武川雅寛
夜は言葉
こわれてしまった一日(w/水谷紹)


−第2部−
大道芸人(w/武川雅寛
素晴らしいさよなら
月の光
夜よ、明けるな(w/リクオ
水門(w/リクオ
私の踊り子(w/ 武川雅寛)
アイ・シャル・ビー・リリースト(w/武川雅寛 リクオ 水谷紹 横澤龍太郎)
僕等は同時に存在している(w/武川雅寛 リクオ 水谷紹 横澤龍太郎)
羽をむしられたニワトリが(w/武川雅寛 リクオ 水谷紹 横澤龍太郎)
朝は詩人(w/武川雅寛 リクオ 水谷紹 横澤龍太郎)


−encore−
地獄のレストラン(w/武川雅寛 リクオ 水谷紹 横澤龍太郎)
夕日は昇る(w/武川雅寛 リクオ 水谷紹 横澤龍太郎 安藤健二郎)


―encore2-
銀の汽笛(w/横澤龍太郎)


*セットリストはうろ覚えのため、一部不正確な箇所があるかもしれません。

ミディの時代(DVD付)

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