フラワーカンパニーズ<25周年ツアー第四弾>フラワーカンパニーズワンマンツアー「Stayin' Alive」(2015/04/18 日比谷野外大音楽堂)

とてもいいライブだった。
野音フラカン」というだけでライブ当日の朝から顔がニヤけてしまう。しかも、お天気も良く*1朝起きてからずっと、気がつくとニヤニヤしている自分がいた。ライブが終わってから、むしろもっとニヤけていても良かったのだと思うほどにいいライブだった。

そして、CDで聞いたときには少し元気がないように思えた新作『Stain' Alive』の曲が、実は鋭くたくましく、かっこいい曲ばかりだったことに気づけたことがとても嬉しかった。
『Stain' Alive』には死の影が何度もちらつく。「死」と向き合うことでかろうじて自分が生きていることの輪郭や実感を掴める、というような生きることにつきまとう虚しさと寂しさ――そんな、歌にするにはあまりに味気なく心許ない風景や心情から目を逸らさずに、というよりもむしろそれらを真正面から歌うということ。それは、ちょうど“祭壇”という曲のなかで不機嫌に呟くように歌われるこんなフレーズに重なる。

君は言ってたね 歌は哀しいって 言葉にしないと 伝わらないから
僕は思うんだ 言葉にならなかった 歌の方がきっと 本当の歌だって

フラカンの歌は、無数の<言葉にならなかった>風景や心情が吹き飛ばされた先で作った吹き溜まりから、砂金のように掬い出されたような歌だと思う。それを抱えていることに疲れてしまい「失くしたふり」をしてわざと置き忘れてきた自分の一部を、さりげなく持ち主の元に届けて返すような歌だと思う。だから、それは<本当の歌>なのだと思う。

この日のライブで良かった曲はたくさんあるけれど、一番心に響いたのは、アンコールの1曲目で歌われた“東京の空”。

抱きしめてみても 抱きしめてみても 抱きしめてみても 一人ぼっち
歩いてみても 歩いてみても どこにもたどり着かないで


東京 東京 東京の朝 冷たい風が吹き抜ける
夢が咳をひとつして 空へ消えてゆく

喪失感と挫折感も滲ませながらも、いぢけることになく健やかに歩き出すということ。無数の夢を吸い込んできた東京の空は残酷でありながらも優しいということ――名曲だと思った。哀愁という言葉を歌にするとき、圭介さんのソングライティングは本当にさ冴えるのだと、感動しながら、感心した。

いいライブだった。中原中也の詩のような「春の日の夕暮れ」にフラカンの歌は聞ける幸せを何度も噛みしめた。

フラワーカンパニーズセットリスト(2015/04/18)
はぐれ者讃歌
永遠の田舎者
short hopes
地下室
この世は好物だらけだぜ
切符
死に際のメロディー
LOVE ME DO
すべてはALRIGHT(YA BABY) (RCサクセションカバー)
感じてくれ
深夜高速
祭壇
未明のサンバ
夜明け
チェスト
脳内百景
星に見離された男
マイ・スウィート・ソウル


―encore1―
東京の朝
ロックンロール
NUDE CORE ROCK'N'ROLL


―encore2―
ファンキーヴァイブレーション
サヨナラBABY

*1: 2年前の4月の野音でのライブid:ay8b20130428は、「48年ぶりの大寒波」(!)で本当に寒かった…。