ザ・クロマニヨンズツアー2013 イエティ 対 クロマニヨン(2013/10/10 千葉市民会館)

ライブの序盤でヒロトが「新しいアルバムからの曲は全部やります」と言った後で、「『新しい』て言ってもだいぶ経ってるけど(笑)」と笑っていたように、アルバムリリース直後の2月から始まったツアーはもう10月に。そして、毎回ソールドアウトしないことでおなじみの(苦笑)千葉市民会館に、クロマニヨンズはまたやって来てくれた。

3月にSHIBUYA 0-EAST、6月にSHIBUYA AXで観たときは、“団地の子供”や“南から来たジョニー”のミディアムテンポで抒情的な曲が印象深かったけれど、今回は“突撃ロック”と“炎”の直球なシングル曲がすごく良かった。“炎”が始まると同時にステージが真っ赤な照明が照らされ、ステージの後ろから『YETI vs CROMAGNON』のジャケットの図柄のセットが登場した瞬間、その瞬間がとても良かった。胸のなかでぶわっと広がるものがあった。ステンドグラスのようにコマ割りで光るセットはとてもきれいで、ホールという空間に映えていた。

どの曲の前だったかは忘れたけれど、ヒロトは会場を見渡しながら「ええ感じ、ええ感じ、言いたいことは分かってるよなー、自由でいいんだぞー」と言ってくれた。その言葉通り、アンコールの“夢の島バラード”(!)で、バイクのハンドルを握るフリをしながら歌うヒロトは自由そのものだった。

ライブの間、ヒロトはずっと笑っていた。とても上機嫌で、とても楽しそうだった。あんまり自分が楽しいから、会場のファンがどこか不自由だと感じられたのではないかと思うほどに。そのぐらい、ヒロトは楽しそうに笑っていた。だから、思い返してみるとライブの間中ほとんどの時間、私はどうしたらあんなふうに笑えるんだろうと考えていた気がする。
「子どものような笑顔」と言われれば、間違っていない気もする。けれど、やはりあれは「子どもの笑顔」ではないと思う。純真とか無垢とか素直とか、その言葉のどれでもあるようでどれでもないような笑顔。もしそれらの言葉を当てはめるならば、それらの言葉の定義をもっと奥深いものに更新する必要があるような気がする。強いて言うならそれは「敵のいない闘い」「恨みのない復讐」「賞金のない賭け」を楽しんでいる表情だと思った。闘いであり復讐であり賭けであるもの、つまり「ロックンロール」という行為それ自体を楽しみ、何の目標も持たず何の見返りも期待せず、ただそれ自体に満たされるということは、人を限りなく健やかに笑わせるのかもしれないと思った。

ツアーはいよいよ11月2日の沖縄で最終日を迎える。私はあともう1回観に行く。クロマニヨンズの1つのツアーでライブを4回観るのは、もしかすると私には新記録かもしれない。けれど、たくさん観たという気はしない。まだまだ観たりないとさえ思う。ヒロトがかつて雑誌のインタビューでThe Whoの来日公演についてこんなふうに語っていたその気持ちが、最近分かるようになった気がする。

僕は10回ありゃ10回観に行くよ。人には勧めない。勧めないけど、僕は10回ありゃ10回観に行って、10回とも自慢すると思うな(笑)
(『音楽と人』2004年9月号)

いいライブだった。

ザ・クロマニヨンズセットリスト(2013/10/10)
突撃ロック
黄金時代
人間マッハ
涙の俺1号
チェリーとラバーソール
キラービー
くじらなわ
歩くチブ
団地の子供
とがってる
ホッテンダー
日本の夏ロックンロール

ヘッドバンガー
南から来たジョニー
グリセリンクイーン
底なしブルー
雷雨決行
オートバイと皮ジャンパーとカレー
紙飛行機
燃えあがる情熱


−encore−
夢の島バラード
タリホー
ナンバーワン野郎!