フラワーカンパニーズ“ハッピーエンド2012~2013”〜真秋の大爆発〜(2012/10/21 渋谷公会堂)

私にとって初めてホールで観るフラカンは、ふっきれてそうでありながら何かをひきずっていて、いつもと勝手が違うようでいながら堂々としいて、やっぱりいいバンドだなと思った。
1曲目の「はぐれ者賛歌」で、ばばばぁぁぁ〜んと音が鳴った瞬間のぬけ具合がすごかった。お友達は「ギターの音が鳴ったとき、かっこよすぎて鳥肌が立った」と言っていた。それが「いつも通りのフラカンの演奏」だというところが、ほんとにかっこいい*1。とってつけたような感じではないキャリアに裏打ちされた「メジャー感」があった。

セットリストは、新作『HAPPY END』の曲とお馴染みの曲をほどよく織り交ぜつつも、新作の曲が印象に残る。「フラカン節」「鈴木圭介節」に貫かれつつもそれを少し客観的に見て、自覚的に「よさ」を活かしたような、ちょっと冷静なトーンが新作の曲にはあると思った。「酔っている」というよりは「醒めている」よさが新作のフラカンには、ある。それはちょうど『HAPPYEND』というタイトルが、確かな現実であるよりも叶わない夢かもしれないという諦めにも似た思いを漂わせているように。

ライブのハイライトはやはりアルバムと同様に“エンドロール”。“深夜高速”や“東京タワー”の情緒的なギターのイントロとは対照的な、無機質な打ち込みによる鈍い金属音が鳴り始めた瞬間、会場の空気が変わった。「3.11のその後を生きるロックンロール」という重い問いを、その重さをごまかさずに言葉とメロディにするということ。無力で無様で無意味でさえあるかもしれない自分自身に対する告発の歌は、フラカン流のプロテストソングでありつつ、正統派のプロテストソングでもあると思った。<おい!そろそろ誰か俺に教えてくれよ!>という叫びは、たくさんの疑問符を並べた果てに<The answer is blowin' in the wind(答えは風の中)>(Bob Dylan“Blowin' In The Wind”)と歌うかのプロテストソングとコインの裏表のようだった。*2

2度目のアンコールで演奏された“夜明け”のアウトロでドラムセットの周りにメンバーが集まって客席に背を向けて演奏する姿に「13年ぶりの渋谷公会堂」というバンドヒストリーを感じてグっときつつも、個人的に一番印象に残ったのは本編中盤の“ロックンロール”。

いつだってバカみたいに十年後も二十年後も
ロックンロールは続いていく どこにもたどり着かないで

進歩も成長もしないままで そのままで
何にも変わらず続いていく 迷いのない声で続いていく

この歌詞の「ロックンロール」は、そのまんま「フラカン」に置き換えられる。未来が見えないことを歌った新作のなかで、さりげなくロックンロールの、フラカンの未来を照らしている曲だと思った。そして、新作のなかでもひときわ健やかなメロディを持つこの曲のアウトロで、<ヘイ ロックンロール>と繰り返しながら行進するように足踏みしていた圭介さんの姿は、ほんの少し勇ましく頼もしかった。

フラワーカンパニーズセットリスト(2012/10/21)
はぐれ者讃歌
脳内百景
切符
煮込んでロック
人生GOES ON
空想無宿
なれのはて
SO LIFE
孤高の英雄
ロックンロール
深夜高速
旅待ち
感情7号線
この胸の中だけ
また明日
エンドロール
終わらないツアー
NUDE CORE R&R
チェスト
恋をしましょう


−encore1−
元少年の歌
真冬の盆踊り


−encore2−
夜明け
サヨナラBABY

*1:私が若干「竹安ギャル」であることを差し引いてもwこの日の竹安のギターはほんっとにかっこよかった。にもかかわらず、その衣装を「ヒートテック」呼ばわりしたボーカルとベース&リーダーの罪はちょっと重いw

*2:そういえば、開演前の会場にはボブ・ディランが流れていた。