Summer Sonic 2010(1日目)(2010/08/07 千葉マリンスタジアム&幕張メッセ)

サマソニは3年ぶり。2日間参加は初めて。真夏の埋立地は思ったより風が吹いていました。
1日目に観た主なライブの感想を書きました。


あらかじめ決められた恋人たちへ
太陽がむき出しになった空とステージの向こうに砂浜が見えるロケーションがミスマッチなようでいて、予想外に映える。というより、演奏が風景を取り込んでいく。かっこいい。鍵盤ハーモニカ(ピアニカ)のはりつめた音とミクスチャーなバンドの迫力。
家に帰ってから、小玉和文の映画音楽『集団左遷』を無性に聞きたくなったことを付記。


矢沢永吉
追加発表のたびにカオス感を増した今回のラインナップのせいで「スペシャル感」が薄れたのは主催者にちょっと反省してもらいたいと思うほど、やはりスペシャル。マイクスタンドが弧を描くたびに「どおぉぉ!」と会場中に歓声が湧き上る(その後、マイクスタンドの底にからまったコードを矢沢さん自身でほどくところでまた歓声。それは自分でやるんだと、新たな発見)
タオルが舞い上がる“トラベリン・バス”。<ルイジアナ テネシー シカゴ/はるかロスアンゼルスまで/きつい旅だぜ お前にはわかるかい/あのトラベリン・バスに揺られて暮らすのは>――この歌詞を、ロックフェスのスタジアムで還暦を過ぎたロックスターが歌うかっこよさ。
ライブの曲間で「ロックンロール」と叫んでいいのは永ちゃんヒロトだけ、という確信をさらに深める。


The Smashing Pumpkins
解散発表後の来日公演(2000年7月)以来10年ぶりのライブ。
マウンテンステージの左右には紫色に光る線描の花のオブジェ。一瞬で「スマパンらしい」と思う。硬くざらついた鋼鉄で繊細な花を作るように、荒んだ音でとても美しいメロディを鳴らすのがスマッシング・パンプキンズだから。ビリー・コーガンのロックミュージシャンには稀有な少女的感性が健在だとわかって安心したような、嬉しい気持ちになった。
ライブが進むにつれて「あぁそうだった・・・」と思い出していた。ビリー・コーガンが「ややこしい人」だったということを。そしてそんな彼の音楽を自分が大好きだったことを。
そのことを完全に思い出すまでの間、つまりライブの前半は自分には少し微妙だった。新旧の曲を織り交ぜへヴィで聞き込むような曲が前半に多く演奏されたことよりも(むしろそこに「らしさ」を感じてちょっとニヤけていたぐらい)、バンドとフロアの間の微妙な距離感にそう感じた。
古い曲をやるよ。みんな古い曲が好きだろ」という自虐的なMCの後のギターのイントロで湧き上がった大歓声。あの会場でそんなふうに思うあまのじゃくは自分ひとりだったかもしれないけれど、その瞬間バンドに対してもフロアに対しても「それはないよ・・・」と憤ってしまった(ビリーの歌い方がかつてのような「トゥーデェーイ」という祈るような歌い方ではなく、「ツッ、デエーイ」とザクザクした歌い方だったこともその気持ちに拍車をかけ・・・)
けれど、続く“Bullet with Butterfly Wings”で観客に<despite all my rage〜>と歌わせておきながら途中で「No,No・・・」と止めて歌い直させたり、“United States”でギターを歪ませて延々とアウトロを長引かせたりしてきたところから、ビリー・コーガン表現者としての頑なさ、「ややこしさ」が顔をのぞかせてきたように感じた。やっと2010年の今の音としてスパマンが聞こえてきた。
中盤、ビリー・コーガンが持つとますます小さく感じられるwウクレレでの弾き語り。観客に応えてウクレレを抱えて何度もおどけてみせたその笑顔と<Love is the sweetest thing>という優しい歌で、ステージとフロアがやっと近づいた気がした。この曲でライブの流れが変わったと思った(この曲がなかったらちょっと危うかった気が・・・)
前半のギクシャクした空気が洗われるように“Owata”“1979”(10年前の日本でのラストライブ。これが最後の曲だった)と続く。そして最後の“Tonight Tonight”が終わった後、物足りなさや予定調和じゃなく満たされた気持ちからアンコールの拍手が続く。私も心から拍手できた。
アンコール。ビリー・コーガンは「戻ってこれて嬉しいよ」と言った。アンコールでステージに戻ってきたことを喜んでいるのだと思った。けれど、彼はこう続けた。
最後に日本でライブをしてから10年が経った。とても長い時間だ。この曲は君に、君に、君に(会場の観客を一人ずつ指差して)捧げるよ。スマッシングパンプキンズを信じていてくれて(believe in the smashing pampukins)ありがとう」。そしてあのスネアとギターの音――“Cherub Rock”。
ステージを去るビリー・コーガンの大きくて猫のような背中を見ながら「あぁそうだった・・・」と思い出していた。スマパンのライブでビリーが実は上機嫌で、ファンをとても大切にしているとわかるのはライブの最後だということを。
いいライブだった。


1日目は他にthe HIATUS(ちょっとだけ)、THE OFFSPIRING(まったりと)を観ました。
自分のなかの「スマパン愛」の変わらぬ深さにちょっと動揺しつつ帰路に着きました(なのでPAVEMENTはさっくりとあきらめるw)。