この曲を初めて聴いたのは2008年のARABAKI RCOK FES.「疾走感のある新曲」という印象でそれ以上でもそれ以下でもなかった。
それから1年半過ぎてリリース。リリースもライブもほとんどないバンドの状態に半ば失望しつつあったところに届いたこの曲を聴いて、切なさを通りこして胸が締めつけられるような気持ちになる。
確かに少年は走り続けていた。けれどそれはもはや「疾走」ではなかった。「疾走」できなくなってもそれでもなお走り続けなくてはならない少年の姿――。
夢でも 夢でも 届かないのに
夢さえ 夢さえ 捨てられない
銀杏BOYZはこれまでも「夢」を歌ってきた。
<夢で逢えたらいいな 君の笑顔にときめいて/夢で逢えたらいいな 夜の波をこえてゆくよ>(“夢で逢えたら”)あるいは<夢の中で僕ら手をつないで飛んでた/目が醒めて僕は泣いた>(“BABY BABY”)――夢の中でこそ、夢の中でだけ叶う願い、届く想い。それは儚いがゆえに現実と同じぐらい切実で、時に現実以上の現実だった。
けれど、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」で歌われる夢はもはやそんな「甘い夢」ではなくなっている*1。
<なんとなく僕たちは大人になるんだ>と歌ったその先に待っていたものが「夢の終わり」ではなく、空っぽの夢を捨てられないことだとしたら、それは「夢の終わり」以上に残酷だということ。
そんな残酷さを映し出すように、ボーカルもギターもベースもドラムも最初から最後まで泣いているように聞こえる。泣きながら繰り返される<ボーイズ・オン・ザ・ラン>のフレーズ。
そのフレーズの挟まれた<「もう遅いか」>という問い――答えはもちろん「Too Late To Die」.もう死ぬには遅すぎるのだということ。
2010年。ザ・ブルーハーツがデビューして25周年ということでリリースが相次ぐ。少年は老いることなくある日突然あの頃のまま蘇る。ロックンロールは「死」を忘れたようにみえる。
けれど、少年の疾走を支えたものが「若さ」であり「生」であるならば、その代償としての「老い」と「死」は確実に存在する。だとしたら、そこから目を逸らさず、それを全身で受けとめのたうちまわるロックンロールを聞きたいと思う。
私が銀杏BOYZを聴く理由はそこにある。
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